フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントのシニア・インベストメント・ディレクター、マシュー・ザサーランド氏が6月12日、「アジア株式市場の見通し」をテーマにアジア市場の傾向と注意点について語った。


アメリカの利上げとアジアへの影響

「まず、アメリカの動きを確認しましょう。アメリカのインフレ予測率は、前回QEのときに非常に資産価格が上りましたが、消費者物価は上昇しませんでした。アメリカ(FRB)が利上げをする結果になりましたが、まだインフレの兆候は見られていないという状況でした。

加えて、アメリカの財政状況が米ドルによって、もはや縮小と同じような意味合いを持っていると考え、金利や利上げといったものはそれほど大きな幅にはならないというふうにみています」

米国の利上げはアジアに影響を及ぼさないのだろうか。

「一般的に米国の利上げが開始されると、エマージングマーケットから資金が引き揚げられるいう意見が出ますが、これはあまりにも極論に傾きすぎた考えです。我々としては、アジアは必ずしも悪くないという見方です。利上げがアメリカで始まったとしても、それほどファイナンスには影響はないと考えております」


GDP成長率と中間所得層の増加

その理由としては、2つの重要な点が挙げられるという。

「まず成長率です。実質GDPの伸びを各国別に見てみたいと思います。日本を除くアジアが非常に急速に欧米諸国、先進国に比べて伸びているのです。アジア各国が、アメリカの2倍以上の伸びを示しています」

また、中間所得層の動向も見逃せない。

「2014年と2009年を比較してみると、中間層に属する人数がアジアで増えています。2030年には主にインドと中国から25億人が新たに中間層に登場することになります」

その金額の規模も注目だ。

「中国では単に何十億という人が中間層に中に入るだけではありません。消費額を見ると中国とインドが2030年までに独走に近くなると見ています」

では、日本にはどのような影響があるのだろうか。

「プラスの影響が日本にも出てきます。中国人の対日観光が増えていきます。必ずしも良いことばかりではないかもしれませんが、現在も観光による収入が非常に大きく伸びているのは事実です」

訪日外国人観光客の中で中国は、2月に前年対比159.1%増であり、一人平均2000ドルを使うという。200万人が1人2000ドルずつ使うとすれば、単純計算で40億ドルだ。

「知人の日本に在住している韓国人アナリストが先週ソウルに戻ったところ、中国人の観光客がソウルでも溢れデパートで買い物をしていると言っていました。単に中国だけではなく、韓国にも中国人観光者が増えていて消費に応戦しているようです」


改革への意志ある国家

「対外債務でGDPに占める割合をみると、アジア金融危機の97年、98年には、アジア諸国は、非常に高い対外債務に苦しんてきました。でも危機が終わった後は、非常に規律を強化して、対外債務を削減してきました。

そして、外貨準備高も非常に高い水準となっているので、経済の脆弱性がますます減ってきたことを意味しています。これは、利上げ、またドル高に対しても以前ほど脆弱性が大きくないということを示しています。それに加え、経常収支も黒字になっており、脆弱性を低減する要因になっています」


エマージングマーケットでも評価は2分

「明確にエマージングマーケットとして改革をしている国と、改革をしていない国があります。単にエマージングマーケットというだけでなく、両国を分けることは重要です。

なぜなら、改革する必要があると認識しているかいないかという意識の差は将来を考えれば重要なポイントです。会社にしても国にしても同じことで、進化をしていかなければなりません。周囲の変化に真摯に対応して進化をしなければ、絶滅してしまうのです」

改革が必要だと認識して改革をしようとしている国はどこになるのだろうか。

「中国、インドあるいはインドネシアです。一方で、ブラジル、ロシア、南アフリカのように改革が中々進まない国は、難しいと捉えています。アジアのエマージングマーケットとその他のエリアのエマージングマーケットを比べると、改革の必要性を認識して行動しているアジアのエマージングマーケットの方が、状況が良いと捉えています」

アジアは非常に色々な選択肢があり、16000社が上場している。

「アジアには非常に多くの国があり選択肢が多いのが特徴です。従ってヨーロッパ、アメリカ全部を合わせたよりも銘柄の種類が多いというのが、日本を除いたアジアという状況です」(ZUU online 編集部)

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