在庫調整圧力をどうみるか~乖離するGDP統計と鉱工業指数の在庫動向

2015年1-3月期の実質GDPは前期比1.0%(年率3.9%)の高成長となったが、その中身については評価が分かれた。

民間消費、住宅投資、設備投資の民間需要がいずれも増加したことを前向きに捉える向きがある一方で、民間在庫品増加による成長率の押し上げ寄与が前期比0.6%(年率2.2%)と全体の半分以上を占めたことに対するネガティブな評価もみられた。

一部では、民間在庫品増加のプラス寄与が在庫の積み上がりを意味し、在庫調整圧力の高さを示しているという見方もあった。しかし、民間在庫品増加のプラス寄与は必ずしも在庫の積み上がりを意味しない。GDP統計の民間在庫品増加はフローの概念で、成長率にプラス寄与となるかマイナス寄与となるかは前期との差によって決まる。

民間在庫品増加がGDP成長率を押し上げるケースは、1.民間在庫品増加がマイナスからプラスに、2.民間在庫品増加のプラス幅が拡大、3.民間在庫品増加のマイナス幅が縮小、の3通りある。このうち、1と2は在庫(ストック)が増加するが、3は在庫(ストック)が減少する。

在庫とGDP成長率に対する寄与の関係

2015年1-3月期の民間在庫品増加(実質・季節調整値)は▲0.7兆円で2014年10-12月期の▲3.2兆円からマイナス幅が縮小した。今回は3のケースに当たるため、ストックとしての在庫は積み上がっていないのである。

最近の民間在庫品増加の推移を見ると、2013年度中は消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり最終需要が強かったことから大幅なマイナスが続き、2014年1-3月期には▲5.2兆円(GDP比で▲1.0%)までマイナス幅が拡大した。消費税率引き上げ直後の2014年4-6月期は駆け込み需要の反動で最終需要が大きく落ち込んだことから、民間在庫品増加はいったんプラスに転じたが、7-9月期以降は再びマイナスが続いている。

形態別には、流通在庫が一貫してマイナスを続けているが、2015年1-3月期は▲0.1兆円と2014年10-12月期の▲1.9兆円からマイナス幅が大きく縮小し、流通在庫だけで1-3月期の成長率は前期比0.4%押し上げられた。製品在庫、仕掛品在庫は消費税率引き上げ後の2014年4-6月期、7-9月期にプラスとなったが、その後は再びマイナスとなっている。

原材料在庫は2014年4-6月期に1.0兆円の大幅プラスとなった後、7-9月期、10-12月期には小幅なマイナスとなったが、2015年1-3月期には再びプラスに転じた。

民間在庫品増加と実質GDP成長率への寄与度

過去2年間(8四半期)の民間在庫品増加による実質GDP成長率への寄与度はプラスとマイナスが4回ずつだが、民間在庫品増加の符号がプラス、すなわちストックベースの在庫が増加したのは、2014年1-3月期の1回だけである。