◇GDP統計の民間在庫品増加は上方修正の可能性も
鉱工業指数の在庫はGDP統計の製品在庫にほぼ対応する。国内の在庫全体に占める製品在庫のウェイトは4分の1程度に過ぎないが、景気との連動性が高い鉱工業生産の先行きを占う上では製品在庫の動向が重要である。
GDP統計の実質製品在庫残高と鉱工業指数の在庫指数は同じような動きをすることが多いが、足もとではGDP統計の製品在庫残高が低下しているのに対し、鉱工業指数の在庫指数が上昇しており、両者の動きが大きく異なっている。
鉱工業指数は数量ベース、GDP統計は実質ベースという概念上の違いもあることなどから、もともと両者が完全に一致するものではないが、ここではGDP速報における民間在庫品増加の推計精度の問題を指摘しておきたい。
GDP統計は毎年12月に前年度の速報値が確報値(前々年度は確報値から確々報値へ)へ改定されるが、現行の2005年基準になってから過去3回(2012年12月、2013年12月、2014年12月)を振り返ってみると、民間在庫品増加についてはいずれもはっきりとした上方修正になっている(2)。
特徴的なのは速報から確報だけでなく確々報への改定でも上方修正されていることである。現在、確々報値まで公表されている2011年度、2012年度についてはいずれも速報値から2兆円近い上方修正となっている。
現時点では2014年4-6月期以降は速報値(2013年4-6月期~2014年1-3月期は確報値、それ以前は確々報値)となっているが、鉱工業指数の動きから考えるとGDP統計の民間在庫品増加は過小推計となっている可能性がある。
鉱工業生産は消費税率引き上げ後の2014年4-6月期、7-9月期と2四半期連続の減産となった後、2014年度後半にはいったん持ち直したものの、在庫調整の遅れを反映しこのところ再び弱含んでおり、2015年4-6月期は3四半期ぶりの減産となることが確実となっている。少なくとも製品在庫については、実態として在庫調整圧力の強い状態が続いていると判断される。
鉱工業指数の動きから考えると、2015年末に公表予定のGDP統計の確報値では2014年4-6月期以降の民間在庫品増加が上方修正される可能性があるだろう。