◇GDP統計の在庫残高は低水準
GDP速報では在庫残高は公表されないが、確報では年末の在庫残高(名目値)が公表される。
2005年末の民間在庫残高に実質民間在庫品増加を積み上げることにより、実質民間在庫残高を求めると、リーマン・ショック時の2008年10-12月期の72.2兆円をピークに減少傾向が続き、2015年1-3月期には59.0兆円となった。直近の在庫残高はピーク時よりも2割程度低く、現行統計が存在する1994年以降では最低水準にある。
従来は速報段階では民間在庫品増加の内訳は公表されていなかったが、2015年1-3月期から実質・季節調整系列に限って民間在庫品増加が形態別(製品在庫、仕掛品在庫、原材料在庫、流通在庫)に公表されることになった。
そこで形態別に実質在庫残高を試算すると(1)、原材料在庫はフローベースの在庫がプラスとなったことを反映し、2015年1-3月期には前年比6.5%とやや高めの伸びとなっているが、製品在庫は前年比でほぼ横ばい、仕掛品在庫、流通在庫は明確な減少となっている。
形態別にはややばらつきがあるものの、直近の在庫残高はいずれの形態についても1994年1-3月期以降の平均に比べると低い水準にある。
◇鉱工業指数の在庫指数は上昇傾向が継続
このようにGDP統計で見る限り、在庫調整圧力の高さは窺えないが、在庫調整の進捗状況を判断する際に用いられることが多い鉱工業指数でみると様相が大きく変わってくる。
鉱工業指数の在庫指数は2014年1-3月期から2015年1-3月期まで5四半期連で上昇している。財別にみると、消費税率引き上げ直後は駆け込み需要の反動の影響から耐久消費財を中心にいずれの財も上昇したが、2014年度半ば以降は多くの財で低下し始めた。
しかし、資本財については2014年度後半以降に上昇ペースがむしろ加速しており、全体では上昇傾向に歯止めがかかっていない。
また、鉱工業指数全体の在庫循環図を確認すると、2014年4-6月期に「在庫積み増し局面」から「在庫積み上がり局面」に移行した後、4四半期連続して同じ局面に位置している。出荷指数の伸びが低下を続ける一方、在庫指数は上昇に歯止めがかかっておらず、在庫調整の遅れを示すものとなっている。