大中都市住宅販売価格変動状況
(写真=PIXTA)

◆7月18日、中国国家統計局は2015年6月の住宅販売価格変動状況を発表した。当研究所で前月比データを単純平均したところ、6月の70都市新築商品住宅(除く保障性住宅)価格は前月比0.17%上昇と5月の同0.07%上昇に続き2ヵ月連続で上昇した。

◆但し、巨大都市以外では下落傾向が続いている都市が依然として多く、販売待ちの在庫も高水準のままであることから、在庫処分のために不動産業者が再び値引き販売に走るリスクは残っている。

特に、例年7-8月は住宅販売が低調な時期にあたるため要注意である。販売量が落ちるこの時期にも、住宅価格は堅調に推移するのか、次回の発表も要注目である。


6月の値動き

7月18日(土)、中国国家統計局は2015年6月の70大中都市住宅販売価格変動状況を発表した。新築商品住宅(除く保障性住宅)価格の全体的傾向を捉えるため70都市の前月比データを当研究所で単純平均したところ、6月は前月比0.17%上昇と5月の同0.07%上昇に続き2ヵ月連続で上昇した(図表-1)。

なお、今回は同時に掲載された中国国家統計局の解説の中に、「70大中都市新築商品住宅価格の前月比総合平均」に関する記述は無かったが、当研究所で加重割合を推定して計算したところ都市規模の違いを勘案した6月の新築商品住宅価格は3ヵ月連続で上昇した模様である。

一方、住宅の販売動向を見ると、昨年は大幅な前年割れが続いて住宅価格を押し下げる要因となってきたが、4月の販売面積は1年5ヵ月ぶりに前年同月を上回り、その後も3ヵ月連続で前年同月を上回った模様である。

昨年11月以降4度に渡る利下げや不動産購入規制の緩和などが効いたものと見られるが、販売待ちの在庫は前年同月比19.3%増と依然高水準で推移している(図表-2)。

商品住宅

個々の都市を見ると、前月比で下落した都市の数は34と前月よりも9つ減っており、上昇した都市の数は27と前月よりも7つ増えている(残りの9都市は横ばい)。上昇した都市数から下落した都市数を差し引いたネットでは▲7と、引き続き下落した都市の方がやや多い(図表-3)。

新築商品住宅

また、最も上昇率が高かったのは深?市(広東省)の前月比7.2%上昇で8ヵ月連続のトップとなった。また、第2位は上海市、第3位は北京市と広州市(広東省)で沿海部の4大都市が上位に名を連ねている(図表-4)。

新築商品住宅-図4


今後の注目点

以上のように中国の住宅価格は下げ止まってきており、特に巨大都市では上昇が加速している。このまま下落が続いて2011~12年頃の水準(デッドライン)を下回るようだと、景気が悪循環に陥る恐れもあっただけに、景気失速懸念が遠退いて一安心というところだろう。

但し、巨大都市以外では下落傾向が続いている都市が依然として多く、販売待ちの在庫も高水準のままであることから、在庫処分のために不動産業者が再び値引き販売に走るリスクは残っている。特に、例年7-8月は住宅販売が低調な時期にあたるため要注意である(図表-5)。

商品住宅-図5

販売量が落ちるこの時期にも、住宅価格は堅調に推移するのか、次回の発表も要注目である。

三尾幸吉郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 上席研究員

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