ソーシャルインパクトボンド
(写真=PIXTA)

社会問題を解決するために政府・行政が取り組む事業に民間の企業・団体が資金を投資、事業成果に応じてリターンを受け取る「SIB」が注目されている。これは「Social Impact Bond(ソーシャル・インパクト・ボンド)」の略。行政にとっての利点は、税金などで資金を調達する必要がなく、思い通りの成果が得られなかった場合も財政負担が残らないことだ。

世界で最初のSIBと言われているのが、2010年のイギリス・ピータバラ刑務所の例だ。18歳以上の男性服役者3,000人を対象に、再犯率を下げるための取り組みを実施するための費用500万ポンド(約7億円)を民間が投資。再犯率が減少して収監コストが下がった場合など、その分を投資家に還元する。


日本でも横須賀市でスタート

イギリスで始まったSIB。アメリカやオーストリラリアなどにも広がり、最近では日本でも取り組みが始まっている。

神奈川県横須賀市が特別養子縁組を促進する事業に、日本財団が資金約1,900万円を提供し、児童養護施設などにかかるコスト軽減を目指すもの。日本財団によれば日本で初めてとなるSIB。契約の調印は2015年4月で、目標は2016年3月までに特別養子縁組を4組成立させることだ。

児童養護施設にかかる市の負担は、1人あたり900万円弱(18年間)といわれる。今回のSIBが成功すれば、市の負担は計3,500万円以上軽減される見込み。特別養護縁組を成立させるためにかかる人件費などを差し引いても、1,630万円の費用削減が期待できる。今回はパイロット事業のため、SIBが成功しても日本財団はリターンを受け取らないという。


介護予防分野で公文が進出

最近では、介護予防分野でのSIB活用も始まっている。

公文教育研究会が認知症予防のためにSIBが導入できるかなどを調査する事業を、経済産業省から受託した。公文によれば、介護予防分野のSIB調査としては日本初の事例だ。

経産省が取り組んでいるのは、「健康寿命」を延ばすための事業。健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送ることができる期間のこと。平均寿命との差は、日常生活に制限のある不健康な期間と考えられるため、経産省はこの差をなくそうと取り組みを続けている。

公文は、介護予防分野にSIBの導入が可能かどうか、また認知症高齢者の脳機能の維持・改善に効果があるとされる「学習療法」「脳の健康教室」などで高齢者の介護度を改善することで、介護にかかる公的費用を削減できるか‐-などを調査する。

児童養護や介護などで始まったSIBの取り組みが、問題の解決や行政負担の削減など期待される成果を出せれば、若者の就労支援をはじめ、より幅広い分野での導入が進むはずだ。

(ZUU online 編集部)

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