2.メリットが大きい分デメリットもあり

非課税措置の最大枠1,500万円は決して小さい額ではない。都内郊外に家を買う場合、返済の負担がかなり軽減される額だと言える。その点から見ても教育資金贈与の非課税制度はかなりオイシイ制度なのだが、メリットが大きい分デメリットも大きい。そのデメリットとは次の点だ。

(1)手続きが面倒な上、当面の資金力はやはり必要
非課税制度の適用対象となる教育資金は、銀行窓口で「教育費として引き出したい」と言えば貰えるものではない。実際に教育費の払込みをし、その際に受け取った領収書を口座開設した信託銀行に提出してから教育資金を引き出すことができるのだ。

つまり、入学金なり授業料なりを一度自ら払わなくてはならない。仮に年間授業料が200万円かかるなら、信託銀行に預けてある教育資金とは別に用意しなくてはならない。また、払い出しを受ける事ができる期間も、3か月~1年程度しかない。普段、領収書や家計簿に無頓着なタイプにとっては、やや荷が重くなるかもしれない。

(2)教育費以外には使えない
メリットが大きければやはり魔がさしてしまい、決められた用途以外に使いたい気持ちが湧いてしまうこともある。そのことを見越してか、この非課税制度はキッチリとルールが作られている。

制度の適用期間中、教育資金以外の支払を受ける場合には(1)の手続きを踏むこととなる。領収書を提出して支払を受けることができたとしても、契約終了時には教育費以外の部分は、贈与税の課税対象となってしまうのだ。

(3)適用期限までに使い切らないと残額には贈与税が課税される
この制度は、あくまでも平成25年4月1日から平成31年3月31日までの期限付きの非課税制度であって、無期限ではない。そのため、この日までに信託銀行に預けた教育資金を使い切らないと、残額は贈与税が課税されてしまう。

また、仮に期限を迎えないとしても、受贈者である子や孫が30歳に達した場合で、口座に資金が残っているときも、残額には贈与税が課される。いったん贈与を受けた者は返すことができないので、教育資金の額をいくらにするか、事前に十分検討する必要がある。

「非課税」の言葉に踊らされずに上手に活用を

何をもって資産と考えるか。これは、人によって違う。「受けた教育如何で将来の収入が変わるのだから教育こそが資産だ」と考える人もあれば「将来の不労所得を産むものこそが資産なのだから、土地や建物こそが資産だ」という人もいる。後者にとっては、通常の暦年贈与や相続を検討する方が、メリットが大きいかもしれない。

制度を上手に活用するも、制度に振り回されるも、利用する当事者次第といえる。「非課税」という言葉に踊らされることなく、制度内容をよく調べ、「自分たちにとっての資産とは何か」を家族内でよく話し合い、考えるべきだろう。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
税理士鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち、会計事務所に転職。妊娠・出産・育児をしながら、税理士試験の受験勉強を続け、2009年に合格。2012年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫と共に、外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。

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