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(写真=Biglife21/松尾直樹社長 )

間伐材を電力に変える発電所で、エネルギーの地産地消を目指す東京都港区の「株式会社ZEエナジー」。化石燃料依存からの脱却を目指す松尾直樹社長に話を聞いた。(取材:綿抜幹夫 / 文:渡辺友樹)


バイオマス発電のビジネスモデル

◆「かぶちゃん村森の発電所」竣工

去る6月2日、長野県飯田市で同社製造の小型木質バイオマス発電装置が稼働する「かぶちゃん村森の発電所」の竣工式が行われた。間伐材を熱分解ガス化して発電する仕組みは国内初だ。

◆地産地消のエネルギーを作りたい

同氏の狙いは、エネルギーの地産地消モデルを実現すること。木材等、乾燥系のゴミは熱分解してガスにし、生ゴミや糞尿等、湿潤系のゴミは、菌を使い発酵させてガスにして、それぞれ発電する。この2つのガス化発電により、地域から出るゴミを全てエネルギーに変えられる。また、発電の他に、熱利用のコジェネレーション、CO2を利用したトリジェネレーションを目指す。

そして、得られた売電収益から一定の割合を、地元地域と木材の供給元である林業等に還元する。さらに、発電所自体を証券化し、金融商品として地域住民に買ってもらう。地域住民は発電所から得られる収益をベースに、毎年利益を得られる仕組みだ。

さらに、20年分の利益を先に償還することができるため、これを利用して新たな発電所を建設する。発電所を作って証券化し、売りながら全国に小型の発電所を作っていく。

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ガス化装置

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ガス冷却装置

◆林業への支援

この発電モデルは、間伐によって出た木材だけで持続可能だ。現在、林業は経済合理性が成り立っておらず、森を育てるために必要な間伐も十分に行われていない。適切に間引かなければ、光が入らないため幹が細くなってしまう。上部でしか光合成が行われず、面積あたりの光合成量が下がる。根が張らないために水害に弱い山林となる。

また、間伐した木をそのまま放置する「切り捨て間伐」も問題だ。間伐しても売れないために放置されてしまうのだが、切り捨て間伐があると、雨が降ったときに自然のダムのように水が溜まってしまったり、腐ってCO2の何倍もの温暖効果があるメタンガスが発生したりする。

こうして多くの問題を抱える林業。一本切るごとに国が助成金を出しているような現状を考えれば、経済合理性を成り立たせて持続させることができる同社のバイオマス発電所が果たせる役割は大きい。

「このビジネスを成功させ、いずれは海外に展開したい。特にゴミの問題とエネルギーの問題の両方に苦しむ新興国に対して、それらを同時に解決するソリューションとして打って出たいと思っています」

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チップヤードに保管されている発電用木質チップ