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(写真=PIXTA)

ドル円相場は先週末以降急落し、足元では121円付近まで円高ドル安が進んでいる。中国経済への不安とそれに伴う資源安などが世界的株安を引き起こし、リスク回避の円買いが誘発されたためだ。また、新興・資源国からの資金流出もリスク回避に拍車をかけている。

しばらくは神経質な展開が避けられないが、円安シナリオは不変だと見ている。中国経済などは確かに懸念材料であり、下振れリスクもあるが、どんどん深刻化して世界的な危機に発展する可能性は低い。

米国の年内利上げ方針を撤回させるほどのインパクトもないはずだ。従って、市場の過度の不安が後退し、リスク回避度合いが薄れるにつれ、円買い圧力は弱まり、日米金融政策の違いをテーマとした円安ドル高基調へと回帰していくと見ている。

ただし、米利上げによる資源安や新興・資源国からの資金流出といった副作用への警戒は今後も高まりやすいだけに、リスク回避的な円高局面はこれからも発生する可能性が高いだろう。

ユーロ円相場は、再び138円台後半までユーロ高が進行。ユーロキャリー取引等で形成されたユーロ売りポジションが、リスク回避によって円以上に買い戻されているためだ。

ただし、ユーロ圏も大規模な量的緩和を実施しており、本来、積極的にユーロを買い進める理由はない。いずれリスク回避地合いが収まるにつれて、ユーロ売りが再開し、3ヵ月後のユーロ円は現状比でやや下落していると予想している。

長期金利は株安に伴う安全資産選好によって、足元では0.3%台半ばまで低下している。ただし、今後3ヵ月では、リスク回避の後退、米利上げ観測に伴う米金利上昇が上昇圧力となることで、0.5%を超える水準に向かうと見ている。
(執筆時点:2015/8/24)

上野 剛志
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 シニアエコノミスト

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