「弱い」監視機能が作られた原因は?

今年春に明るみに出た不適切会計の問題で、経営のガバナンスを刷新するために東芝 <6502> が新しい動きを次々と繰り出している。8月27日には、資生堂 <4911> の前田新造相談役が、取締役会議長に就任することが明らかになるなど、経営ガバナンスの強化に向けた取り組みも着々と進んでいるように見える。

実際、経営陣にとっても厳しい現実を直視しようとしている様子も窺える。7月20日には、同社の不適切会計について調査を実施していた第三者委員会が報告書を提出し、東芝は経営陣の刷新を公表。当時、社長を務めていた田中久雄氏をはじめ、元社長の佐々木則夫副会長と西田厚聰相談役、さらには歴代社長らが辞任して、再出発を演出した。

その一環として、資生堂の前田相談役の取締役会議長への就任だけではなく、三菱ケミカルホールディングス <4188> の小林喜光会長も、東芝の社外取締役に就任する予定だ。もともと16人を数えた東芝取締役会のメンバーも半数が引責辞任し、同社取締役は11人に削減。さらには、そのうち7人を社外から起用することになっている。


まだまだ厳しい東芝への「世間の目」

しかしながら、東芝の不適切会計に対する反発は今なお強い。その一例が株主代表訴訟の動きだ。

すでに米国では、今回の東芝の不適切会計を受けて、個人投資家が同国内の裁判所に提訴。東芝に対して損害賠償を請求する動きが表面化した格好だ。外国人投資家との関係を鑑みれば、海外からの信頼を取り戻すことも、同社が越えなければならない一つのハードルとなりそうだ。

また、国内でもすでに、「2015年に発生した,東芝の粉飾決算事件によって発生した,株主の損害を回復するために結成された弁護団」として、東芝事件株主弁護団がウェブサイトを立ち上げており、説明会を9月5日に開催する予定。株主代表訴訟を提起する可能性が増してきているといえそうだ。

ほかにも、一部の金融関係の経営コンサルタントは「不正の背景にある経営管理態勢の問題についても、リスク管理部門、内部監査部門、社外取締役、監査委員会等の機能不全を色々と指摘しているが、そうした不備を改善するための提言には、具体的な内容が殆ど含まれていない」と、第三者委員会の提言に対しても手厳しい。

さらに、「9月下旬の臨時株主総会までに、さまざまな改革案が公表されるだろうが、このままでは“仏作って魂入れず”に終わるのではないか」といった声も出ている。


より強力な社外からの監視が必要?

金融関係の経営コンサルタントは、東芝自身や第三者委員会の改革案以外にも、ガバナンスを強化する対策を提案。東芝のような複雑で、技術についての知識も求められる企業に対するガバナンスの強化を強力に推進する機関の設置を求めている。

具体的には、「内部監査部門の独立性強化」「社外役員選任機構の創設」「証券取引所による監査法人の選任」が列挙。「東芝が不正会計問題を克服するためには、まず幅広く外部の意見を聞き、可能な限り独立性の高い社外役員を選任するとともに、内部監査部門の独立性を大幅に高めなければならない」と同氏は強調した。

ほかにも、「政府が中心となり社外役員と監査法人の独立性を一層強化するための仕組み作りを行い、それを東芝に適用することが必要だ」と強力な改革を求める声があがっている。(ZUU online 編集部)

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