(3)コミュニケーションロボットの利用意向

冒頭でも述べたとおり、「平成27年情報通信白書」の「パートナーロボット」では、前記した「介護用ロボット」に加え「コミュニケーションロボット」、「子育て支援ロボット」の3分野のロボットについて触れられている。

「コミュニケーションロボット」は「介護用ロボット」の中でも高齢者の見守り用としての機器開発が複数進展している。なお、「子育て支援ロボット」も幾つかの開発事例があるが、まだ社会的認知も低いため、本項では割愛する。

図表-5 コミュニケーションロボットの利用意向(年代別)

さて、コミュニケーションロボットの利用意向(年代別)は右図のとおりである(図表-5)。全体の利用意向では、「利用したい」が8.9%、「利用を検討してもよい」が37.4%で、両者の合計割合は46.3%となっている。年代別の利用前向きの合計割合では、「60代以上」が54.5%と最も高い。次いで「50代」の51.3%が続き両世代で50%を超えており、中高齢層になるほど前向きの利用意向が高くなっている。

「介護用ロボット」の利用に前向きの割合と比較すると、全体的に各世代において幾分低めの利用意向となっているが、年代が上がるごとに利用意向が高まり、「60代以上」が最も高い点を考えると、介護ロボットの各種報道によって高齢者の見守りなどによる活用シーンが報じられていることが影響していると推察される。

また、最近のコミュニケーションロボットの社会的認知度を高めた一つの背景に、ソフトバンクロボティクス社の感情認識パーソナルロボット「Pepper」のクラウドAIを使った高い対話学習機能がテレビ報道などで知られるようになった影響などがあろう(図表-6)。

図表-6 「Pepper」の外観

今後の様々なコミュニケーションロボットの登場と認知が進めば、さらなる利用意向が醸成される可能性もある。高齢者などの見守りや生活支援を兼ねたコミュニケーションロボットの登場はクラウドAIやIoTの技術革新により、その機能の向上や応用開発も期待されており、高齢者のQOL向上の面からも注目される動きの一つであろう。

なお、開発に当たってはプライバシー保護やネットのセキュリティ対策に十分な取組が必要であると考えられる。

(4)将来ロボットの活躍が期待される分野について

最後に「情報通信白書」の同アンケート調査より「将来ロボットの活躍が期待される分野」の結果を示す(図表-7)。「ロボット新戦略」が本格始動しているが、一般の生活者を対象とする複数分野のロボット活用への期待についてのアンケート調査は初めてではないだろうか。

図表-7 将来ロボットの活躍が期待される分野

アンケート結果を見ると「防災」分野の「期待できる」と「どちらかと言えば期待できる」が合計78.7%で最も期待感が高い。次いで「介護」分野の77.6%、「医療・健康」分野の76.4%が続いている。以降でも「防犯」が72.6%、生活支援が71.8%と7割を超える期待が示されている。

また「子育て」分野で期待が低い点は、「情報通信白書」の「子育て支援ロボット」のより詳細なアンケート集計結果にあるとおり、「ロボットが子供の面倒を見ることへの心理的な抵抗」や「安全性への懸念」があるためであろう。このほか、子育て支援ロボット開発でプロトタイプのロボット登場も数が少なく、まだ社会的な認知度が低いという背景もあろう。

ロボットの活躍が期待される分野については、前述のとおり、ロボット革命を目指した「ロボット新戦略」の初期段階ということもあり、回答者が自分なりに将来的なロボット開発・普及の理想状態を想定した上で、期待する分野を選択している可能性が高い。

このアンケート調査結果で、将来ロボットの活躍が期待される分野として、「介護(介護用ロボット)」が上位に位置したことは、本格的な開発・普及の前段階においても、介護ロボットに対して高い期待が寄せられていること示していると言えよう。各分野で、これらの期待に応えるロボット開発と社会実装へ向けた動きの活発化を期待したい。