調査結果から示唆される点

本章では以上の「情報通信白書」のパートナーロボットの利用意向調査の「介護用ロボット」の調査結果に焦点を絞り考察を加えたい。

◆強い期待感の表れ

繰り返しとなるが、介護ロボットを含めた様々なサービスロボットの本格的普及前の時点での意識調査であるため、回答者の各ロボットに関する認知状況や実用化面での様々な理解の度合いがアンケート調査結果に影響しよう。しかし、この点を考慮しても、このアンケート調査には、回答者の介護ロボットに対するかなり大きな期待感が反映されていると考えられる。

「介護する側として」「介護される側として」とする両面からの質問に対して、図表-1及び図表-3において「利用したい」「利用してほしい」とする15%前後の回答割合部分は明確な利用意向と判断してもよいだろう。

それらに続く二番目の選択肢の「利用を検討してもよい」「利用を検討してほしい」との回答割合が共に5割弱と非常に高くなっているが、今現在の時期が介護ロボットの開発・普及の前段階であることを考慮すると、筆者は、この両選択肢には前提条件が存在するのではないかと考えている。この点について以降で簡略な検討を加えてみたい。

◆両選択肢が示唆する2つのポイント

結論を先に述べると、二段階の前提条件が考えられる。その一つ目は、この両選択肢の直前には「使える介護用ロボットがあれば」という前提条件が付くのではないだろうか。さらに、介護ロボットが開発・普及の前段階という点を勘案すると、この前提条件の前に「まだよく分からないが」という前提条件も潜んでいるのではないだろうか。これを整理して以下に示す。

図表-1「介護する側として」:「1.まだよく分からないが、2.使える介護用ロボットがあれば、利図表-3「介護される側として」:「1.まだよく分からないが、2.使える介護用ロボットがあれば、この両選択肢の高い回答割合は、このような条件を前提とする期待表明と解釈することができないだろうか。

この前提条件は、今後の目的別の多様な介護ロボットの開発・改良と社会実装へ向けての取組に大きな示唆を与えていると筆者は考えている。筆者が補足した期待表明の1、2の二つの前提条件が示唆する点について検討してみよう。

1の「まだよく分からないが」という点については、今以上に介護ロボットの普及啓発が社会全体に対して必要とされているということを示唆している。

「介護(用)ロボット」という言葉自体、様々な介護・介助目的の機器群を包含する「大分類」の言葉であり、筆者は、今後、その「中分類」を示しつつ、開発中の機器の現状や将来の活用シーン、その効用などを分かり易く、社会へ継続して情報発信していくことが重要であると考える。将来的に「在宅介護」分野での普及を目指すのであれば、さらにその重要性は増そう。

2の「使える介護ロボットがあれば」という点については、「使える」という言葉に2つのポイントがある。1つ目のポイントは「安全に使える」ということであり、2つ目のポイントは「安価に使える」ということである。

なお、これら二つ意味を含む「使える」という言葉は、過去の政府の成長戦略に記載されてきた介護ロボット(ロボット介護機器)開発に関する文書内でも使用された表現でもある。