CRE戦略
(写真=PIXTA)


CRE戦略とは何か

今まで多くの企業は、自社ビルや工場、倉庫などの不動産を保有してきた。だが不動産業を生業としている企業でなければ、それらは単なる保有資産にすぎなかったと言えるだろう。

しかし、ようやく日本でもCRE戦略の重要性が認識され始め、企業としてあらゆる成長の可能性を追求するうえで、明確なビジョンに基づいた不動産の有効活用が欠かせないものとなってきた。2008年には国土交通省が80ページにも及ぶ「CRE戦略を実践するためのガイドライン」を公表し、国内企業にその推進を働きかけている。

そもそもCRE(Corporate Real Estate)とは、企業が保有もしくは賃貸しているすべての不動産のことを意味している。旧来の企業経営者はそれらについて、「必要だから保有している」といった感覚しか持ち合わせていなかったのではないだろうか?


CRE戦略が企業業績の拡大や企業価値の高まりに貢献

そのような発想とは完全に一線を画しているのがCRE戦略だ。企業価値の向上という経営戦略上の観点から不動産を有効活用することを突き詰め、改善策を遂行していく。つまり、効率的な不動産の活用が本業のビジネスとともにその企業の経営を支える柱となってくるのだ。

たいていの企業においては、バランスシート(貸借対照表)の資産の部で不動産がかなりのウエートを占めていることだろう。にもかかわらず、前述したようにさほど積極活用してこなかったのが実態であり、そのスタンスを抜本的に見直せば、今まで想像もつかなかった新たな収益源が生まれる結果となる。

裏返せば、バランスシート上でウエートが高いからこそ、CRE戦略の推進が企業業績の拡大や企業価値の高まりに多大なる貢献をしうるのである。単に保有資産のみならず、賃貸物件のオフィスや福利厚生施設など、より広範にわたって根本から見直しを図れば、それだけ大きな成果が見込まれる。

具体的には、遊休地や統廃合に伴って発生した余剰不動産の売却、本社機能の集約といったリストラはもとより、不動産流動化・証券化ビジネスの活用も視野に入ってくる。また、戦略的に新たな不動産を取得したり、不動産関連事業の遂行・管理をアウトソーシングしたりするのも一考だ。

こうした取り組みが不動産という名の経営資源を企業の成長に大きく生かせるばかりか、ひいては日本国内の不動産市場の活性化にも貢献しうることだろう。だからこそ国交省が後押し、官民が一丸となってCRE戦略に取り組もうとしているのだ。


CRE戦略が重要視される背景

では、最近になってにわかにCRE戦略が重視されるようになったことには、いったいどのような背景があるのだろうか? まず、企業の株式を保有している機関投資家に対する行動規範として「スチュワードシップコード」が定められたのに前後し、積極性に欠ける企業経営に意見を物申す株主が急速に増えてきたことがあげられる。

加えて、上場企業に対する行動規範である「コーポレートガバナンスコード」も策定され、いっそう株主を重視した経営を迫られる環境となっている。 株主重視の経営とは、配当政策などを通じて利益の還元に努めるとともに、企業価値の最大化に邁進することを意味する。

さらに、会計のグローバルスタンダード化が進められていくのに伴ってキャッシュフロー経営が尊ばれ始め、保有資産の効率的な運用も重点課題とされるようにもなった。今、不動産市場はバブル崩壊後から長く続いてきた地価がようやく底打ちしたものの、地方と大都市圏ではその後の上昇にかなりの格差が生じるなど、その推移はまだら模様となっている。したがって、保有している不動産の特性に応じては、より臨機応変な活用法が求められる。

先進的で成長に意欲的な企業であるほど、もはやCRE戦略は不可欠なものとなってきていると言えそうだ。(提供: Vortex online

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