地方交付税
(写真=PIXTA)


はじめに

すべての都道府県、市町村(以後、「地方公共団体」と表記)が住民に必要な行財政サービスを提供するに当たって、財源に不足が生じないように国から交付されるのが地方交付税である。

その総額は、2月に国が公表する地方財政計画において決定されている。ただし、国の税収伸び悩みと財政赤字が長期にわたって続くなか、地方交付税に対する法定財源だけでは、地方が必要とする地方交付税の水準を確保することができず、特別な措置を講ずることが毎年度繰り返されている。

この特別な措置は「地方財政対策」と呼ばれ、対策の主要手段として2001年度に創設されたのが臨時財政対策債である。

臨時財政対策債が特別視される理由は、地方公共団体が発行する地方債でありながら、地方交付税に準ずる財源として、発行可能額を国が決めていること、調達した資金には使途の制限は課せられないこと、元利償還金に対して、その100%が次年度以降の地方交付税算定過程において国から補填を受けること、にある。

地方交付税の「分割・後払い」に近い性格づけがなされているのが臨時財政対策債であると言っても、過言ではないであろう。とはいえ、償還に関わる責務を負うのが発行した地方公共団体である点は、他の地方債と何ら変わらない。財源補填は、通常、20年ないしは30年かけて行われるため、償還が満了するまで厳格な資金管理も求められる。

しかし、臨時財政対策債が地方交付税に準ずる財源だからという理由で、これを地方債総残高から除外した金額を地方公共団体の実質的債務残高とみなして財政状況を説明する資料が多々見られる。臨時財政対策債の残高は2014年度末に48兆円に達し、これを含む地方債総残高145兆円の1/3を占めるに至っている。

実質的な債務残高から臨時財政対策債を除外する考え方は本当に妥当であろうか。そもそも、わずか14年間で臨時財政対策債がここまで増大したのはなぜなのであろうか。今後、臨時財政対策債はどうなるのであろうか。当レポートでは、元来の地方債としての側面に注意を払って、臨時財政対策債に関するこれらの問題について考えてみたい。