かつて日本でも大きく注目された新興国「BRICs」。米ゴールドマン・サックス・グループは9月、「長引く成績低迷」を理由にBRICファンドを新興市場株式ファンドに統合することを米証券取引委員会(SEC)に報告した。経済成長著しいとされた新興4カ国だが、名付け親が事実上の撤退することは心理的にも大きな影響につながりそうだ。


「BRICsが政策に取り組む姿勢に今後の成長見出せず」

14年前、ブラジル、ロシア、インド、中国が“一つの巨大なハッピー・ファミリー”として機能するという青写真は、当時急成長中だった各国の経済状況から察する限り、決して不可能なことではないように思えた。

しかし時の経過とともに新興国の経済は大きく失速を見せ、ピーク時には8億ドル(約985億6319万円)だったBRICsの運用資産は、1億ドル(約123億2039万円)まで大幅に目減りした。

ゴールドマンが撤退を決断した背景には、こうした数字上の業績不振のほかに、「BRICs自体の政策に取り組む姿勢から、今後成長や改善の可能性を見出せなかった」という推測もささやかれている。


「足の引っ張り合いで利益を逃している」GTA調査

英シンクタンク、グローバル・トレード・アラート(GTA)が7月に発表したレポートでは、BRICs間で貿易政策に関して摩擦が生じていることが報告されていた。

GTAはレポート内で、BRICsの加盟国同士が足を引っ張り合っており、それが原因で「2008年以降、BRICS全体の経営利益の3分の1が阻害されている」と指摘。そのうち5分の4はBRICs内部の対立や、ゆがみによって引き起こされた被害だという。

最も影響を受けている中国は707回もの「損害」が記録されており、ロシアは199回、そのほかの3カ国はいずれも250回前後のマイナス効果を受けている。

しかしどの国も政策改善という点では積極性や協調性に乏しく、ほかの先進国や経済国のように外交上の駆け引きを上手く取り計らえる「エキスパート」の存在にも欠けている。


中国の突出 どうなるBRICs銀行

「規模、文化、国民性、経済力、発展レベル、すべての点で全く異なる4カ国を統合させようという試み自体に、最初から無理があった」という声もあがっている。

「新興国の経済成長」という同じ枠組みでも中国経済は常に突出しており、世界のGDP(国内総生産)の13.3%を占めている。一方ブラジル、インド、ロシアは3%以下と、その差は歴然だ。

BRICsは南アフリカを加えた5カ国で新開発銀行(BRICs銀行を2014年に設立したばかり。足並みが崩れつつあるうえ、ゴールドマンという後ろ盾を失ったとなれば、影響は決して小さくないだろう。各国の動向とともに、BRICs銀行の先行きからも目が離せない。(ZUU online 編集部)

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