問題の根源は冷静な投資を妨げることにある

では、ナンピン買いは、どんな場合でも避けるべき手法なのだろうか。確かに「どんな場合でもすべきではない」という意見もある。先に述べたように、ナンピン買いは短期売買では有効とはいえない。ナンピン買いを否定する傾向が強いのは、巷にそれだけ短期志向の投資家が多いということかもしれない。

そもそもナンピン買いは、なぜ避けるべき手法と考えられているのだろうか。

それは、株価が値下がりして含み損を抱えた状態になると、投資家はそわそわして理性的な判断ができなくなってしまい、そうした中で決断を迫られ、かえって傷口を大きくしてしまうという点に理由がある。投資家心理に影響を与え、冷静な投資行動を妨げるということが問題の根源だ。小さな損失額にあたふたして、さらに大きな損失を招いてしまうのでは確かに良いはずがない。

ただし、ナンピン買いを計画的に進めることができるとしたらどうだろうか。バランスの良い投資額で、買い下がることで株の平均単価を下げるという行為そのものには意味があるのではないだろうか。

計画的にポジションを積み増すには有効

参考例として、株式投資の手法のひとつである株式累積投資(るいとう)について紹介しておきたい。累投は、証券会社を通じて毎月一定額づつ株式に投資していく取引である。一定額を継続的に投資するため、株価が高い時より、株価が安い時の方が多くの株数を買うことになる。毎月同じ株数を買う場合に比べ、平均単価は低くなる。

累投を続けていると、どれだけ毎月の投資額が少額であっても、いずれは単元株の株数に達し、投資家が好きな時に株を売ることができるようになる。相場が右肩上がりの時に単元株に達したら、即座に売れば利益を得ることができる。安い時に購入した持ち分の含み益があるからだ。

逆に、相場が下落傾向にある時に単元株に達した場合、取得単価はその時点の株価より高いため、すぐに売れば損失が生じる。とはいえ、積み立て期間のどこかの一時点で単元株を買った場合に比べれば、取得単価は低めに抑えられている可能性が高い。損失を被ったとしても、時間を掛けて買うことで損失自体は小さくすることができる。時間を味方につけた有利な投資法だ。

長期投資で時間を味方につければ恐れる必要はない

ナンピン買いも、計画的に、時間を味方につけて行う限り、投資家にメリットをもたらすことが可能である。たとえば「この銘柄は2割下がったら買い増す、その後さらに2割下がったら強制的に損切りする」という具合に、あらかじめ大まかに投資方針を決めておけば、場当たり的にナンピン買いをして損失が膨らみ続けるような事態は避けることができる。

時間を味方につけるということで考えると、ナンピン買いは長期投資に向いている。投資額の上限を決めておき、10年、20年という投資期間を設定し、リスクを意識した上でナンピン買いを行えば、ポジションを積み増す方法としては有効だといえるだろう。

投資家にとって大切なことは、投資に失敗してもなるべく投資資金を減らさず、次の機会に備えることにある。ナンピン買いをする前には、投資先の銘柄がどこまで値を戻したら利益を確定するか、どこまで下落したら損切りをするかといったロードマップを頭に入れておくといった用意周到さが必要である。もちろん、冷静に判断するためには、市場の地合いや投資先企業の業績動向などを把握しておくことが重要であるのは言うまでもない。(ZUU online 編集部)