現在、政府は欠損法人(赤字企業)の外形標準課税を拡大する検討を行っています。 これは政府が目指す法人税減税政策の一環として行われるものです。 黒字企業の税率負担を減らす代わりに、欠損法人の負担を強化するという政策です。
一見すると、この政策には矛盾を感じます。 黒字企業の法人税を減税するのに、なぜ赤字で苦しむ企業は増税になるのかということです。 しかし、このことには「欠損法人の実態」が関係しています。 実は日本の中小企業の約70%が欠損法人です。 そしてその中には、例えば高所得の個人自営業者や裕福層がいわゆる「法人成り」を行って、企業を設立している場合が多いと言われています。 それらの高所得者は、設立した企業から自らの給与という費用を発生させ、企業を赤字にしているのです。 すると当然その法人は赤字となり、法人税は発生しません。 また、それらの高所得者がその企業から得た給与には税金がかかりますが、この給与に係る税金は個人事業者として支払う税金よりも安いのです。 よって、法人成りが節税対策になっていることになります。
これが欠損法人率70%のからくりというわけです。 欠損法人の課税強化は、高所得の個人自営業者や裕福層に対する課税の強化になるということなのです。 よって欠損企業の負担強化は正当であり、しかも欠損法人の比率が70%を超えていることから、法人税減税に一役買うのではないかというのが政府の見解のようです。 いわば、これ以上節税対策を行わせまいという政府のメッセージというわけです。 しかし、節税対策ではなく、本当に赤字で資金繰りに苦しむ企業などにとっては、非常に厳しい処置とも言えます。 「すべてをうまく収めることのできない政策のジレンマ」がここにあるように感じられます。
Photo:Calculating Taxes Up And Downby kenteegardin