エージェントを使いこなしている――転職情報サイトを見るだけでは不十分

転職活動でまず頭に浮かぶのは、転職情報サイトに登録してインターネットで情報を探し、エントリーするという形だ。だがある程度経験がある、マチュアなビジネスパーソンは、エージェントを使いこなしたほうがいいという。

「エージェントというより、道案内をしてくれるキャリアコーチのような存在を見つけるべき」

と小松氏はいう。自分のキャリアに悩んだ時、昔なら上司や先輩に相談したもの。しかし転職が一般的になった今、上司には言いづらいこともでてくる。また部下のキャリア志向を把握したり、部下を育てようとしたりできる上司が少なくなっているという。

昔は上司が悩める部下に声をかけたり相談に乗ったりするものだった。たとえば希望ではない経理部に配属された部下がいたら、「数字を知っておくのは出世するうえでいいことだぞ。そこで頑張ってみたらどうだ?」といって諭したものだった。生涯、1つの企業に勤め上げるのが一般的だった時代は、そういうアドバイスに耳を傾けたものだ。

しかし、最近は辞めるハードルは低くなっているうえ、転職を勧める上司もいるほど。さらに自分が転職するつもりの上司も少なくないわけで、参考にはならない。

ただし、いいエージェントに出合うには、複数会ってみることが必要だ。自分に合った人かどうか分からないし、中長期的なアドバイスをしてくれる人かどうか分からないからだ。

そしてデキる人材は、当面転職の予定がなくてもエージェントとのコンタクトは取り続けるという。客観的なアドバイスを聞いて自分の市場での評価を知っておくべきだし、転職する必要性に駆られてから動き出す人と比べたら、リードを持って転職活動ができる。

また優秀な転職エージェントは、採用する企業側から評価されているため、「人事権者に強力な口添えをしてくれる可能性がある」(小松氏)という。企業の求人に直接応募しても返信がないこともあるというから、自分に合ったいいエージェントは見つけておきたい。

ただし、忘れてはいけないのが「エージェントのクライアントは企業」ということ。求職者から料金を取るサービスもあるが、一般的には企業からお金をもらうのがエージェント。入社後の想定年収が600万と700万の候補がいれば、後者を入れようとしがちだという。

さらに、エージェントはたくさんの人に会うので、一人ひとりのことまで覚えているとも限らない。いいエージェントを探しておくことは必要だが、過信は禁物だ。