第3のビールは消えゆく運命にあるのか?
第3のビール第一号の「サッポロ ドラフトワン」は画期的だった。原材料に麦芽や麦を使わず、えんどう豆から抽出したエンドウたんぱくを使用。ここに来て日本のメーカーは、ビールの主原料である麦芽を使わずにビール風の飲み物を作るという離れ業をやってのけたのだ。また、発泡酒にスピリッツや焼酎を混ぜるなどして「消費者の財布を痛めないこと」と「ビールに近い味わいの提供」の両立に注力し続けた。
この20年の経緯を振り返ると、「ビールと発泡酒と第3のビールの酒税額が同じになる」ことの意味がわかってくるだろう。
各メーカーが莫大な研究資金と最新鋭の技術と優秀な人材を投入して、ようやく開発に成功した「ビールに近い味わいの」商品群の武器(=価格の安さ)が奪われるのだ。「発泡酒や第3のビールの方が飲みやすくて好きだ」という人ももちろんいるかもしれない。しかし、麦芽がしっかり使われたうえに飲みやすいビールが減税される一方で、発泡酒や第3のビールの増税により価格面での優位性が薄れるのは避けられない。そもそもメーカー側も「低価格で売れる」から作っていたのだ。ビールと税率が同じになってしまったら、発泡酒や第3のビールが消えてしまう可能性だって十分ある。
外に向かっての戦いが始まるのか、それとも…
国内ビール市場が縮小傾向にあることは、日本のどのメーカーもわかっていた。本来、グローバル化時代に備えて様々な資源を集中させるべきだったこの20年間に、国内だけでしか通用しない商品開発に力を入れざるを得なかったのは不幸とすら言える。
追い打ちをかけるように、その注力した商品群の未来の見通しも全く明るくない。では、20年戦争の勝者は国なのかと言うとそれも違う。お酒の税収はこの20年で約40%も減った。第3のビール類の開発・発売が続けばさらなる税収減も確実である。つまり、勝者がどこにも存在しないのだ。グローバルな視点でいえば、日本の各メーカーが足踏みを続けたことで、欧米のメーカーが勝者とも言える皮肉な結果を招いている。
「ビール税20年戦争」は終わったわけではない。だが、ピリオドが近付いてきているのも確かだ。国も小手先の定義変更や法対応ではなく、今回に関しては税額の統一という最終案を出している。その意味でビールの税額を下げているのは譲歩と言ってもいい。ポジティブな面を挙げると、足の引っ張り合いや不必要な開発への資源投入がなくなるということ。フラットなスタートラインの向こうで、国内メーカーは次こそ内ではなく外に向かって戦いを挑むのだろうか。それとも、まだスタートラインは遠いのか。向こう一年間、消費者としても注意深く情勢を見守りたいところだ。(ZUU online 編集部)
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