「利上げをしてもすぐに株は下がらない」注意したい2つのシグナル

12月に利上げが観測されている米国市場はどうなるだろうか。市場では、米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度)が、12月15日~16日のFOMC(連邦準備制度理事会)でFFレート(=フェデラル・ファンドレート、米国の代表的な短期金利)を0.25%引き上げるとの予想が多い。FRBの利上げによる、世界のリスク性資産への影響について見ていこう。

秦氏は、過去に米国が利上げをした際のリスク資産への影響について、①ITバブル崩壊時、②リーマン・ショック時の過去2つの急落局面を振り返りながら解説した。

①ITバブル崩壊(2000年初頭)
ITバブル前、FRBは1999年6月に最初の利上げをおこない、実際に株価が下落を見せ始めたのは2000年4月。利上げをおこなってから、約10ヶ月のタイムラグがあったとのことだ。

②リーマンショック(2007年~2008年)
次にリーマンショック前について。FRBは2004年6月に最初の利上げを開始しており、株価が下落を始めたのは2007年11月。ITバブル期同様に、約3年のタイムラグが見てとれるとのこと。

秦氏は、「ITバブル時もリーマンショック時も、米FRBが最初の利上げを開始してから株価が下落するまでに、何回も利上げを繰り返しており、12月に利上げをしても世界のリスク資産がすぐに下落をする恐れは少ない」と結論づけた。

ただし、「FF金利が米国の潜在成長率を超えるようになってくると危険なサインである」と述べた。調達金利が、成長率よりも上がってくると企業にとって厳しい環境になるというわけだ。また、もうひとつのサインとして、「米民間銀行の貸出態度」についてもふれ、0%を上回っていく(厳しくなる)ようであれば株価下落のサインとのことで、この2つのシグナルには注意をしたほうがよさそうだ。


今夏の中国市場暴落、経済減速で2016年はどうなる?

中国市場について秦氏は、「政策対応の効果で景気底割れは回避するだろう。もともと中国経済は減速して当たり前である。なぜなら、中国は生産年齢人口(働き手の人口)が減ってきているからで、問題は経済成長率の落ち方にある。今夏の株式市場の下落の要因を振り返ると、マーケットは中国経済が急速に落ち込むことを心配したためであると考えられるが、我々は緩やかに減速していく見方をもっている」と述べた。

その理由として、「中国政府は、金利引き下げや公共投資などのテコ入れを徹底的に行い、金融政策・財政政策の両面から様々な対策で支えている。これを受け、株式市場の下落は落ち着いており、今マーケットは安心している。こうした期待があるため、世界経済を大きく下げるリスクは少し遠のいた」とした。


2016年の日本の株式市場について

秦氏によると、日本の株式市場は、GDP成長率低下の心配もあったが、2016年にかけても強く動いていくとのこと。最大の理由として企業が利益を上げている企業業績にあるとした。「日経平均株価と企業の利益の関係を示す『1株あたり利益(EPS)』が増加する。2015年は前年比10%増、来年は9%増が予想されている。10%利益が伸びるということは、株価が10%上がってもおかしくはない」と、強い企業業績を背景とした日本株上昇のシナリオを語った。


2016年の為替相場見通し

2016年の為替相場に関して、基本的には円安・ドル高トレンドが継続するとのことだ。「過去、日米の金利差が拡大すると為替相場はそれに連動してきた(金利差拡大で円安、縮小で円高)。FRBが12月に利上げをおこない、さらに来年もゆるやかに利上げをしてくことが予想されている。一方の日本は、当分の間利上げができる状況ではない。日・米の中央銀行の金融政策が真逆の方向性をとっていることから、円安・ドル高トレンドが継続していくだろう」と秦氏は語った。 (ZUU online 編集部)

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