(写真=PIXTA)
世間では少子化が叫ばれるようになって久しいですね。そのようなご時勢を背景に「婚活」「妊活」といった言葉が社会に定着しています。
若い世代が抱えるこれらの問題の解決と、高齢者の資産活用の促進を主な目的として、結婚・妊娠のための資金を子や孫に与える際に贈与税を免除する制度が、現在登場しています。
うまく使えば、 将来の相続税を減らす助けとなってくれるというメリットにあずかれます。
それに加えて、老齢の親や祖父母世代にとっては「残っている預貯金を愛する子・孫の役に立つ形で使える」、子や孫世代にとっては「高くつく結婚や家族計画のための費用負担が、一気に楽になる」といったメリットが出てくるこの制度。今から詳しく見ていきましょう。
以下のようなガイドラインに従いながら利用すると、贈与税が免除されます
この制度はまだはじまったばかりで、有効になったのは平成27年4月1日のこと。とはいえ期限(平成31年3月31日まで)がありますから、この4年間によく計画して使うことが大切です。
この制度は必ず、金融機関に申し込んで使います。用意してもらった口座に、祖父母・親が子・孫のために入金すると、その金額が非課税になるのですが、次のような制約を受けます。
金額
・結婚を援助する場合:300万円まで
・妊娠や育児を援助する場合:1000万円まで
税務署への申告
金融機関が代行してくれますが、何の目的で使ったのかを証明するため、領収証を金融機関に提出することが義務付けられています。
年齢
子や孫が20~49歳までの場合に有効です。
※途中で、子や孫が50歳に達した場合は、その時点に残っている金額に対して贈与税が課税されます。
非課税になる範囲
結婚や妊娠・出産に関係があるなら、どんな目的で使ってもよいわけではありません。たとえば結婚式の費用や新居の家賃・敷金・引越の費用はOKですが、結婚相談所の料金や新居に入れる家電製品やインテリア用品の代金はNGです。出産・子育てに関してなら、不妊治療の医療費や保育費はOKとなるものの、ベビーグッズの代金はNGとされています。
※この点については複雑に分類されています。逐一確認するに越したことはないでしょう。
結婚・出産・育児を対象とする、新しい贈与税非課税制度に落ち度はない?
「落ち度」というほどではないですが、気づかずに使ってしまうと足元をすくわれてしまうパターンであれば、この制度においても考えられます。ここで多少例をあげてみましょう。
1.途中で、親や祖父母が急逝したら?
この制度を利用している間に、出資していた親や祖父母の体調が急変するなどして故人となった場合は、残額はどうなるでしょうか?
まだ結婚や新生児のために使われていなくても、それらの残金はすべてそれらの目的に使われたものと解釈してもらえます。つまり贈与税を払う必要はありません。
とはいえ、相続財産の一部だと解釈されてしまいます。そのため、他の遺産相続分と合算して、相続税を期限内に納付しないといけません。
2.実は、普段とあまり変わらない?
この制度に頼らず「子や孫が何らかの出費を強いられるたびに、資金提供する」。そのようにすることも(当然のことながら)簡単にできますね。
元来、子や孫といった直系卑属に対しては扶養義務があります。そして、扶養義務がある者から結婚や育児の費用に充てる金銭を贈与したときは、贈与税が課せられないことになっています。必要ができた際に金を出すだけでも、それなりの節税効果につながる可能性があるのです。
したがって、この制度を使う必要がないケースは、普通に起こり得るのです。
専門的なアドバイスを受けながら使っていくべき制度
結婚や子育ての資金を対象とする贈与税非課税制度は、認めてもらえる範囲が細かく規定されています。その点を確かめた上で、どう使ったらよい結果になるのか慎重に検討する必要があります。
資金を援助する側(親や祖父母)と受ける側(子や孫)の財政事情を考慮することも大切なら、資金の使い道や家族構成を考慮することも大切です。このほかにも、資金を与える側の年齢や健康の状態等、判断材料に含めたほうがよいポイントはかなり多岐にわたります。それでも使い方が適切であればとても満足できる結果が待ち受けています。
家族全員が喜べる結果になるチャンスを与えてくれる制度であることは間違いありません。
とはいえ、満足度を高くするためには専門的な判断が必要です。素人判断をすると、だいぶ時間が過ぎてから後悔してしまうかもしれません。この制度を使うべきか使うべきでないか、使うとしたらどんな使い方がふさわしいかを確かめたい場合は、どうぞお早めにお声掛けください。
奥田 周年 (おくだ ちかとし) 税理士。
OAG税理士法人
資産税部 部長執筆書籍は、遺産相続と相続税がよくわかる本(日本文芸社:監修)、ずるいぞ!その相続(かんき出版:編著)、Q&A相続実務全書(ぎょうせい刊: 共著)等多数。相続税・贈与税の専門税理士でチーム相続を組織し、
メディア
を主宰。
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