流行語大賞やヒット商品番付など人は何かと過去を振り返り、ランキングしたくなるものだ。あげく今年の漢字なるものが話題となる。良くも悪くもそういうものなのだ。ならば、当然今年1年のマーケットについても同じことをやってみたくなる。そこで、今回は「日経平均株価が動いた日」という視点で今年1年を振り返ってみよう。

夏場の人民元切り下げを背景に大波乱

結果を見る前に今年の相場がどうであったか自分自身で振り返って欲しい。まず、今年前半のマーケットは概ね堅調に推移していた。1月にはスイス中央銀行が金融政策を変更したことから、スイスフランが急騰するなど波乱はあったが日経平均株価への影響は限定的で4月10日には日経平均株価は一時2万円の大台を突破した。

6月1日には27年ぶりの12連騰を記録。さらに6月24日には2万0868円をつけ2000年のITバブルの高値を上回った。ギリシャや中国の問題をはらみながらも底堅く推移していたが、突如マーケットに異変が訪れた。

異変をもたらしたのは、夏場に発生した人民元の切り下げだった。これを皮切りに、日経平均株価は調整局面入りすることとなった。そして9月29日、日経平均株価は8カ月ぶりに1万7000円を割り込むと同時に反発に転じるなど大波乱となった。

2015年は下落も上昇も8〜9月に集中

「日経平均株価が下落した日」の第1位は8月24日、対前日比で895円の下落を記録した。同日の下落率は4.61%だ。以下第2位が8月25日の734円、第3位9月1日の725円、第4位9月29日の714円、第5位7月8日の639円と続く。いずれも、8月下旬から9月下旬にかけて相場が大きく下落したタイミングと重なることが分かる。

一方で「日経平均株価が上昇した日」の第1位は9月9日の前日比1343円高、以下第2位8月26日570円、第3位8月28日562円、第4位9月30日457円、第5位10月23日389円と続いている。上昇のトップもまた8月から9月に集中している。

このように、2015年においては8月から9月にかけて日経平均が上下に大きく変動した。

相場は下げるスピードのほうが速い

単純に日経平均が大きく動いた日を並べるだけでは面白くない。このランキングでひときわ目を惹くのは9月9日の上昇(前日比1343円高)だ。この上げ幅は1994年1月31日以来、21年7カ月ぶりで、歴代でも6番目の大きさだ。

東証1部では上昇銘柄が1877銘柄と99%近い銘柄が上昇し、まさに全面高だった。上海市場の下落が大きな焦点となっていた時期であり、前日の日本市場終了後に中国市場が大幅上昇したことを受け、欧米市場が軒並み大幅上昇した流れをそのまま引き継いだ格好だ。また前日まで6営業日連続で空売り比率が40%を超えていたことから、売り方の買い戻しがさらなる買い戻しを呼ぶような展開となったことで、引けにかけて一段高になったとの臆測もある。

しかしながら、9月9日の急騰を除けば、対前日比の値幅、変動率ともに概して下落時の方が大きくなる傾向がある。

「相場で大きく儲けるにはカラ売りが手っ取り早い」ということを聞いたことはないだろうか。過去の全ての相場で検証したわけではないが、このように言われているからには、実際に多くの人がそのように感じているのだろう。上昇相場では時間をかけてゆっくりと株価が上昇していくことが多いが、下落相場では一気に株価が下落する傾向があるのだ。

投資家の恐怖心と欲が相場を動かす

なぜこのようなことが起こるのだろう。相場は投資家の心理戦のような側面がある。そして株価は買いたい投資家が多いときには上昇し、売りたい投資家が多いときには下落する。実にシンプルだ。悪材料が出たとき、今年の8〜9月でいえば中国経済の失速、そして先の見えない米国金融政策など相場の悪材料に投資家は一斉に反応した。

今売らなければより多くの損失が発生するかも知れないという恐怖心に取りつかれた投資家は損失覚悟で売り注文を出す。ロスカットラインを設定している投資家は無条件に売り注文を出さねばならないし、信用取引を行っている投資家は追証を免れるためにはやはり無条件に売らねばならない。

反面、上昇相場での投資家心理は全く異なる。投資家は上昇し始めた相場にはまだまだ懐疑的だ。売り注文をこなしながらゆっくりと株価は上昇していく。そして、多くの人が相場の強さに気付き、一儲けしようと考えた時にはもう相場は上昇余力を失っていることが往々にしてある。

「相場は悲観の中に生れ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福感とともに消えていく」そんな相場格言がある。技術が発達し、1000分の1秒単位で注文を処理できるまでに高速化されたインフラが用意され、HFT(超高速取引)が相場を席巻する時代になってもこの格言に秘められた先人の思いは変わらない。

相場を動かしているのは結局のところ投資家の恐怖心と欲にほかならないからだ。(ZUU online 編集部)