米国連邦準備理事会(FRB)は米経済が金融危機後の余韻から回復したと判断。過去7年間にわたるゼロ金利政策に終止符を打ち、利率を引き上げることで成長段階に移行する意思を明らかにした。約10年ぶりの利上げだが、長い間予想されていた動きだったことに加え、段階を踏んで調節を行いながらの利上げとなることで、各国の反応は穏やかだ。

理事会報告は予想通り ポジティブな政策修正に

連邦公開市場委員会(FOMC)後に行われたジャネット・イエレン議長による会見内容が、0.25%から0.5%までの利上げを含めおおむね予想通りだったことから、利上げ直後にドルの売買が一時的に活発化したものの、翌日の日経平均株価は1万9353円と全面高に反映されている。

また来年の世界経済の実質成長率も2.3%から2.4%に引き上げられるなど、総体的にポジティブな政策修正となっている。

2018年まで3.5%増目標 利上げ休止の選択肢も

FRBは今年に入って労働市場が堅調な回復を見せていることから、中期的にインフレが2%まで上昇することを見込んでいる一方で、利上げによるインフレの動きを逐一モニタリングし、今後の追加利上げの可能性や時期を検討するという。

金融政策を穏やかに調節する目的で、当面の目標を2016年1.5%、2017年2.5%に据え置き、2018年までには最終目標である3.5%まで引き上げる計画だが、成果次第では利上げを休止する選択肢も残されているなど、「リスクを慎重に秤にかけた適切な判断だ」と、米経済の健全な成長によせる期待を明確にした。

米国に続いて利上げの可能性が高まる欧州

しかし不安定な経済状況が続く新興市場への影響、欧州や日本の追加緩和政策との対立など、今回の利上げが引き起こすであろう様々な波紋への懸念は、いまだ根強く残っている。

FRBは「新興市場の混乱を回避するためのコミュニケーションは、十分に心がけていた」とし、米国経済のみではなく、世界経済という大きな視点から見た決断であったことを強く主張。米国利上げが世界経済に及ぼす波乃効果を打ち消した。

米国が利上げに踏み切った今、欧州も来年はそれに続くという見方がさらに強まっており、欧州中央銀行(ECB)の今後の動きに注目が集まっている。世界2大銀行が段階を踏んで利上げを実施することで、「世界経済を標準レベルに戻す」という両者の狙いは実現されるのだろうか。 (ZUU online 編集部)