「実質負担金0円」と「1円携帯」は類似の料金構造

携帯電話会社がスマホを1台売るごとに販売店に支払う「販売奨励金」。割引や値引き、キャッシュバックの原資となっており、本来は10万円ほどのスマホが「実質負担金0円」で売られる。最終的に「販売奨励金」は各社の長期契約者が支払う通信料金で回収される。

このような「販売奨励金」が端末の低価格を支える料金構造は、かつての「1円携帯」とよく似ている。異なるのは低価格の恩恵を受ける側で、当時は主に「新規契約者」が対象だったが、現在は「MNP利用者」となっている(MNP=Mobile Number Portability。電話番号を変えずに携帯電話会社を乗り換えること)。

「1円携帯」が隆盛だった2005年、国内における携帯電話・PHSの普及率は70%前後。2011年に100%を超え2014年には121%と、現在ひとり1台以上の携帯電話・PHSを持つ計算になる。このような状況のなか、携帯電話事業者の戦略は新規需要の獲得から他社の契約者を狙う方向へシフトしている。

ただしそこで生じる問題は昔も今も変わらない。

新たな販売モデルと魅力ある通信端末に期待

「1円携帯」による新規契約者と長期契約者の料金負担の不公平さが問題なったが、現在もまた、今度はMNP利用者とのあいだで、「実質負担金0円」がもたらす不公平感が議論の的となっている。

先述の有識者会議が12月16日に示した素案は「実質負担金0円」を禁止し、5000円以下の通信料金プランの新設を携帯電話会社に求めるものだ。仮にこの求めに応じ通信料金が下がるとすると、一方で、端末価格が高騰する可能性がある。情報通信ネットワーク産業協会「2015年度携帯電話の利用実態調査」によれば、1〜2年以内にスマホを買い替える者が約6割を占めている。今後このサイクルが長くなることも予想される。

スマホの買い替えサイクルの延伸といった市場環境の変化を予想してのことか、Appleが「iPhoneアップグレードプログラム」を始めたという話がある。これは一定期間アップルに月額料金を支払った利用者に対し、iPhone端末の返却を条件に、最新のiPhoneを配るというものだ。

プログラムの契約期間は24カ月で、12カ月で新しいiPhoneへと切り替えた場合、その時点から再び24カ月のプログラムが始まる。このサービスは米国のアップルストアで限定発売されており、利用者は主要な通信会社(Verizon、AT&T、T-Mobile USA、Sprint)のなかから通信回線を選べる。近い将来、日本でもこのような販売モデルが提供されるかもしれない。

「実質負担金0円」の禁止は端末の買い替え需要の減少につながりかねないという懸念もあるが、新しい販売モデルの勃興や価格の高い安いにかかわらず購買意欲をそそる新たな魅力を備えた通信端末の誕生に期待したい。(ZUU online 編集部)

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