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機関投資家として注目されている日本の生命保険会社各社が、じわりと運用方針の変更を打ちだしてきました。日本銀行による金融緩和が日本国債の利回り低下を招き、今までのように日本国債に頼る運用では販売した保険契約の利回りを確保できないと判断したためです。主に外国債券での運用を想定しており、各社が今年度1年間に増加を見込んでいる資産全体のうち、明治安田生命で3,000億円程度、住友生命が数千億円、三井生命が500億円程度などとNHKでもニュースになっておりました。外国債券に限らず、不動産投資や国内成長株、国内外の社債、新興国向けの投融資の規模も拡大するとのことです。日本生命は「外国株式、不動産、太陽光発電など成長分野への投資など、新分野への資金配分を増やす」という発言もしています。運用先の多様化をはかるのは、利回りを確保する他にも一極集中による過度なリスクテイクを避ける目的もあります。多くの生命保険会社が外資系金融機関と組んで投資を行っていく模様です。

生命保険会社各社は長いこと、契約者と約束した利回りを運用でカバーできないという状態いわゆる逆ザヤに苦しんできました。しかしながら、アベノミクスによる株高もあり、ようやく逆ザヤが解消し、自己資本も厚くなり始めました。その矢先のニュースに多少の驚きが隠せません。リスクテイクをするべき時代には、保有株式を放出し、投資家が群がってきたこの時期に大きな投資を始めるというこのパターンは、わずかな収益を求め、大きなリスクを取りに行っているという構図にも見えるのです。

アメリカでは住宅ローンの焦付き問題いわゆるサブプライムローンが終息したものの、今度は学生ローンが第二のサブプライム問題としてくすぶり始めています。一方、中国でのシャドウバンキングの問題も明らかになってくれば、金融市場は再び混乱を起こしかねません。そういった状況の中、市場が好調だからと言って、参加してきた生命保険会社各社の運用姿勢には、いささか疑問が残ります。日本国債だけでの運用では再び逆ザヤになる危険性を孕むため、やむに已まれぬ運用方針の転換なのでしょうが、大きな損失を被らないように願うばかりです。