損益通算,証券税制
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2016年1月から証券税制が変わる。15年も残るところあとわずかだが、債券投資で評価益が出ている投資家は年内に売却したほうが有利な場合が多く、早めのチェックが必要だ。


押さえておきたい債券税制変更

税制変更のポイントは3つ。①債券類は株式と同じ申告分離課税方式に統一される②株式と債券類の損益通算が可能になる③債券類も「特定口座」が利用できるようになる、ことだ。逆にいうと、株式の税制、すなわち20.315%の申告分離課税はこれまでどおり変わらないが、債券類の課税方式が株式同様に簡素化される。このため今回の改正は、株式にしか興味のない投資家には無縁かもしれないが、ポートフォリオの幅を将来広げようとお考えなら知っておくのも悪くない。これらの変更点について順を追ってみていこう。

ここでいう債券類とは、公社債や債券投信ファンド、MMF(マネー・マーケット・ファンド)などである。現在の税制では利子収入や売却損益、償還損益に対する課税方法がそれぞれ異なり、税区分も給与など他の所得と合算する総合課税、それと切り離して計算する源泉分離課税、さらには非課税であったりと複雑極まりない。

例えば、国債など定期的に利子を払う利付債では、利子は源泉分離課税、売却益は非課税、満期まで保有した場合の償還差益は総合課税になる。また利払いのないゼロ・クーポン債では売却、償還の差益はともに総合課税の対象だが、税区分はそれぞれ譲渡、雑所得という具合である。これを一律に株式と同じ20.315%の申告分離課税にして、金融商品ならどれも同じ課税方式に簡素化かつ公平にするのが今回の改正だ。

資産間の損益通算と損失繰り越しで税負担が軽減

損益通算に関しては、これまで株式と債券類のどちらかで利益が出るとその分丸々課税されたが、今後は片方に損失が生じた場合はもう一方の利益から差し引く損益合算ができるようになり、その分税金が安くなる。さらに、年間の合算損益がマイナスになった場合は3年間の繰越控除、つまりその後3年の間に利益が出たときにこの年のマイナス分を差し引く制度が利用できるようになる。これまでは債券類の損失は繰り越せなかったからこれも新たな仕組みだ。

「特定口座」はこれまで株式や株式系ファンド、REIT(不動産投資信託)などに限って認められていた制度だが、来年からは債券類にも適用される。申告分離課税では一年間の配当や投資損益を計算して翌年の3月半ばまでに確定申告、いわゆる「青色申告」をしなければならない。各資産の損益通算を含む全ての手続きを証券会社などが代行してくれるのが「源泉徴収あり特定口座」。確定申告の手間を省きたいならこれを利用しない手はない。

今回の税制改正は2013年度に決まったもので、財務省はその意義を、「貯蓄から投資へ」の流れを推進する政策に沿うものであるとし、金融商品間の税負担の中立性を確保した、簡素で分かりやすい税制になり、個人投資家の投資リスクを軽減する助けになると説明している。

利益の出ている債券投資は年内売却が得策

この改正でとくに注意したいのは、これまで非課税だった利付債と債券ファンドの売却益に対し、来年から新たに20%強の税金がかかることだ。とくに影響が大きそうなのが外貨建て、なかでもドル建ての債券ファンドやMMF。現在の為替水準より円高局面で買い付けたファンドには大きな為替差益が出ている可能性がある。これらは年内に一旦売却して非課税のメリットを活かしたうえで、必要に応じてまた買い戻せば節税になる。

逆に、ブラジル・レアルやオセアニア通貨建ての債券ファンドなどでは為替差損で損失が生じている可能性が高いが、これらを年内に売るのは避けたい。この損失を来年以降に計上すれば前述した損益通算で課税所得を少なくできるからだ。

ただ、ゼロ・クーポン債の場合は少し複雑なので要注意。年内はまだ総合課税の対象だから、今年の所得税率が高い人は年内に損失を確定すると節税になるケースもある。特例控除枠50万円を大きく超える評価益がある場合もその保有期間や他の所得との兼ね合いによっては年内売却が有利にならないとも限らない。ゼロ・クーポン債で大きな評価損益を抱えている投資家は金融機関の窓口で一度相談してみるといいだろう。

以上をまとめると、来年から債券類の課税方法が変わり、これまで非課税だった利益が課税されることになるため、評価益が出ているものは年内に売却するのが得策だ。過去に遺産相続をしてそのまま放ったらかしというケースもあるかもしれない。年の瀬も迫り何かと気ぜわしいが、なるべく早めに自分のポジションを確認し、必要であればアクションを取ることをお勧めしたい。(上杉光 シニア・アナリスト)