(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

不動産という「箱」に人の力で価値を与える仕事がある。それが「プロパティマネジメント」だ。PM(ピーエム)と略されたりもするが、はじめて不動産投資を行う人にとっては聞きなれない言葉かもしれない。今回はプロパティマネジメントとは何か、さらに、近年プロパティマネジメントが重視されるようになってきた背景についてご紹介したい。

プロパティマネジメントとはなにか?

プロパティマネジメントとは、いわゆる不動産の管理・運営業務のことを指す。「ホテルとワンルームマンション」を例にとると分かりやすいかもしれない。いずれも部屋の中に風呂やトイレ、ベッドルームなどがあり、旅館業法などの細かい点を除けば、不動産の「箱」としては、ホテルもワンルームマンションも不動産の成り立ちはよく似ている。

しかし、部屋という似たような不動産の「箱」であっても、管理・運営の仕方で両者の収益は異なってくる。例えば都内で同じものをホテルにした場合、1泊1万円として月30万円の売上を生み出す部屋になるが、ワンルームマンションにすると家賃として月10万円しか売上を上げることができない部屋ということになる。

この差はなぜ生まれるのだろうか。それは人が部屋をホテルとして運営し、ホテルとして管理するというプロパティマネジメントのサービスが入るためだ。人の力によって、月30万円稼げる「箱」になるのである。

重視されてきたプロパティマネジメント

プロパティマネジメントの重要性の認識は、ここ数年、不動産オーナーの中でも高まってきている。シェアハウスが成功しはじめたことも不動産オーナーの意識を変えた要因として大きいと思われる。管理・運営面で見ると、シェアハウスはワンルームマンションとホテルの中間に位置する。ワンルームよりは煩雑な業務が多いが、ホテルほどは求められない。今まで空室だった賃貸マンションに、シェアという管理・運営サービスを加えたことで、空室率を改善し収益を上げる部屋に生まれ変わったのだ。このシェアハウスの成功により、最近では管理・運営次第で不動産の価値があがることを不動産オーナーも認識しはじめている。

この他、オフィスをコワーキングスペースに、月極駐車場を時間貸し駐車場にすることで、不動産の価値を上げている例などが挙げられる。いずれも不動産に新しい管理・運営を加えたことで、不動産の価値を高めている。また地方自治体が保有している体育館やプールに大手スポーツクラブが運営として参入したことで収益が改善している例もある。これも広義でプロパティマネジメントによる成功例に含めていいだろう。このようにシェアハウスなどの住宅系に限らず、オフィスや倉庫、商業施設といったあらゆる不動産において、プロパティマネジメントはその価値を高める役割を果たしているのだ。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

なぜプロパティマネジメントが求められるのか?

このようにプロパティマネジメントが重視されるようになったのには、日本が人口減少社会に入り、賃貸事業における空室率の高まりも要因として挙げられる。これまでのような単なる箱貸しでは空室は増加するばかりで、不動産の価値が下がるようになってしまった。この価値下落を補ってくれるのが、テナントにサービスを与えるプロパティマネジメントなのだ。住宅やオフィスも一つの施設と捉えれば、プロパティマネジメントという施設運営力を加えることで、住宅やオフィスという施設の価値を維持できるようになる。

不動産投資のリスク

不動産投資を行ううえで、最も意識しなければならないのは空室リスクだろう。空室状態が長引けば、賃料を下げざるを得なくなり賃料下落リスクが発生する。ここで賃料を下げてもテナントが入らなければ、さらに空室対策用のリノベーションなどを行うことになり、修繕費リスクも発生する。空室は収入を下げるだけでなく、新たな追加投資の必要まで迫られるものなのだ。団塊の世代が退職し、就労人口も減っている現在、空室リスクの問題は住宅に限らず事業系のオフィスであっても意識しなければならない問題となっている。

また建物は放っておけば古くなり、その価値は自然と下がってしまう。その下落を抑えるのもプロパティマネジメントの仕事である。通常プロパティマネジメント会社には、ビルの清掃や設備点検などを行うビルメンテナンス会社が連携する形をとる。プロパティマネジメント会社が入ることで、例えばビル清掃会社に細かく指示を出すなどの目配りが可能だ。また人の目が介入することによりビルの美観が保たれ、オフィス利用者に快適性を与えることもできる。行き届いた管理・運営をすることが、ビルに品格を与え築年数が経っても価値を維持することができるようになるのだ。

プロパティマネジメントの効果と重要性

これまで、プロパティマネジメントは賃料徴収や督促などの会計業務、賃上げ交渉やクレーム処理などのテナント対応、清掃や警備などビルメンテナンス会社への指示などが主な業務であった。しかし近年は不動産オーナーへの空室対策提案や優良テナントに長期間入居してもらうためのテナント維持活動なども手がけるようになり、その業務内容は高度化している。一昔前なら、ビル管理といえば定年後の高齢者がのんびり仕事しているようなイメージもあったが、今やその様相はまったく変わり、オーナーやテナントに対して積極的に提案を行い、不動産の価値を高める活動を行うアグレッシブな会社も多い。

普段テナントと接する機会の多い管理会社は、お客様であるテナントの声を最もよく把握している存在だ。そんな管理会社の提案する空室対策が有益なものとなるのは自然のことだろう。オーナーとしては実力ある管理会社にプロパティマネジメントをさせることで、空室が発生しても有効な対策を取ることができる。

高い賃料を払い長く入居してくれているテナントを大切にすることも肝要だ。ここで優良テナントに行き届いたサービスを提供するのも、プロパティマネジメントの役割である。

不動産賃貸業において、立地やビルスペックをハード面のサービスと見るならば、プロパティマネジメントはソフト面でのサービスだ。ハードの限界を超えられるのはソフトのサービスとも言える。これからの不動産賃貸業は、プロパティマネジメントによって不動産に価値を与え続けることがますます重要となるだろう。(提供: Vortex online

【関連記事】
一生に一度は行きたい!世界の有名な美術館・博物館トップ5とは?
資産運用から見る『区分所有オフィス』投資のメリット
相続税対策としての不動産活用術
圧縮率8割も!? 相続対策の意外な方法とは
10位でも1億円!? 世界一高いスーパーカーランキング【2015年版】