(写真=PIXTA)
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2015年の株式市場は、「日本株の地力の強さ」を認識させた。前半の日経平均は「2万円回復」や「歴代3位となる12連騰」などの記録を作りながら、年初から約2500円の高騰劇を演じた。

その後FRBの利上げムードやギリシャ不安などを受け、相場の雰囲気が徐々に悪化してきたところへ、中国ショックによる世界同時株安が発生した。日経平均株価は一時、それまでの上昇幅をほとんど放出するほどの下落に見舞われたが、世界の多くの株式市場が年初来安値を割り込むのを尻目に、現在もなお底堅さを見せている。

ここからは、2016年の株式市場を左右する可能性がある10のテーマをピックアップし、日本経済、ひいては関連銘柄の株価への影響を占ってみたい。

1.中国経済

「爆買い」に象徴されるインバウンド需要の急増が相変わらず報道を賑わしてはいるものの、世界に大きな影響を与え続ける中国経済に、昨年は不安要素が目につき始めた。格差や環境汚染などの問題が半ば恒常化している一方で、2015年12月20日に広東省の工業団地で発生した大規模な土砂崩れからは、同国の急成長を支えてきた筋肉の疲労による綻びが伺われる。

ただ、例え中国の未来を一律に否定してしまうのは簡単だとしても、そこに肯定的な視点が埋没されてしまう危険性には十分に警戒する必要がある。「中国経済はGDP世界第二位の位置にあり、依然として成長を続けている」、「得意の『物真似』は、かつての日本が辿ってきた道でもある」、「領土問題や人権問題における強引な政治手法は、歴史的に見れば過渡的なものとして容認すべき点もある」などなど。現実をじっくりと直視した上で、巨大な国土と膨大な人口を抱えるこの国の先行きを見守る必要がある。

中国の動向に株価が左右される銘柄は枚挙に暇がないが、DOWA HD <5714> や巴川製紙所 <3878> 、伊藤忠商事 <8001> 、日産自動車 <7201> 、コマツ <6301> 、ユニ・チャーム <8113> など、代替性の低い交易の比率が高い銘柄や、中国経済に依存性が高い銘柄については、十分に動向を注視しておくべきだろう。

2.イスラム国の脅威

2015年11月13日にフランスのパリ市街と郊外の商業施設で発生した同時多発テロ事件に、世界の人々は否が応にもイスラム国の脅威を身近に感じざるを得なくなった。「難民に混入して身を隠したテロリストが、密かに入国しているのではないか」、「当面海外旅行は控えるしかない」、「各国の首脳が集まるイベントの安全対策は大丈夫なのか」、という具合。いずれにせよこの問題が世界経済の縮小を招いていることに間違いは無い。

警備の強化に直接かかわる銘柄としては、アール・エス・シー <4664> やトラネット <4754> 、東洋テック <9686> 、セコム <9735> 、セントラル警備保障 <9740> などに注意が必要だし、セコニックHD <7758> 、テクノホライズンHD <6629> 、高千穂交易 <2676> 、テクノマセマティカル <3787> 、ユビテック <6662> など、監視カメラ関連銘柄の動きからも目が離せない。

3.原油安

2015年の夏場から原油の国際相場が急落。直接の引き金になったのはシェールオイルの増産にあったとしても、ハイブリッド車等低燃費車の普及や航空機の燃費改善などを始めとする実需の抑制に、世界的な景気減速が複合的に絡まった結果の価格下落であり、このトレンドは一時的なものではないとの見方が大勢だ。

資源小国の日本にあって、原油を燃料として大量消費するような業種にとっては、原価の下落は直接的なメリットになる。海運大手の日本郵船 <9101> や商船三井 <9104> 、物流では日本通運 <9062> やヤマトホールディングス <9064> などがその最右翼だ。無論発電用重油の値下がりは、電力各社にとっても追い風になる。

一方、原油を材料として使用する業種にも注目しておきたい。王子HD <3861> などの製紙業界や、自動車メーカーを通じてガソリン安に好影響を受けるブリヂストン <5108> などのタイヤメーカー、塗料ほか化学メーカーにも追い風が吹く。

4.オリンピック・パラリンピック

1964年の東京オリンピックは、日本が高度経済成長期に入る強烈な契機となった。今や成熟期を迎えた日本にとって、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催は、どのような効果をもたらすのだろうか。

まず注目されるのが大成建設 <1801> 、大林建設 <1802> 、清水建設 <1803> 、鹿島建設<1812> などのゼネコンだ。また、セメント用石灰石の日鉄鉱業 <1515> 、運動施設用資材のクリヤマHD <3355> 、住友大阪セメント <5232> 、太平洋セメント <5233> 、日本コンクリート工業 <5269> などの建設資材関連銘柄にも動きが期待される。

大会に向けては通信インフラの整備が不可欠で、NTT向けの通信工事を主体とするコムシスHD <1721> や高速通信対応設備工事の協和エクシオ <1951> などにも注目すべきだろう。もとより広範な業種に影響を及ぼすテーマには違いないが、経済効果が顕著化するにはタイムラグがあり、その意味で「2016年」の株式市場を見極めておく冷静さが必要とされる。

5.ドローン

ドローン (drone)というのは、英語で雄のハチDroneを指す語句だ。上空からの鳥瞰が調査や工事の進行管理に効果的に利用される一方で、不謹慎な私的使用やテロへの利用も懸念されるなど、何かと話題に事欠かない存在となっている。

自律型マルチローターヘリとも呼ばれるドローン。直ぐに連想が働くのは、上空からの監視や直接的な物の運搬といった応用分野、ないしは飛行時間を長く持たせるためのバッテリー開発などの技術分野程度なのかも知れないが、実際には「空の産業革命」とも言われるほど、ドローンの可能性は広範に及ぶ。

2016年の株式市場で注目すべきなのは、「イスラム国の脅威」の項目に掲げた警備関連銘柄のように、特定目的への適合性深化が期待される銘柄や、イメージワン <2667> 、菊池製作所 <3444> 、モバイルクリエイト <3669> など、開発関連の銘柄だろう。特殊センサーとの融合や、太陽光電源の応用や長時間持続バッテリーの開発等、電力供給にかかる技術革新、コントロール信号ないしはその識別技術の高度化など、開発の余地はまだまだこれからと言って良いだけに、関連するニュースには敏感でありたい。

6.FinTech

金融のFinanceと情報技術のTechnologyを組み合わせた米国発のこの造語が、いま金融業界の新しいトレンドとなりつつある。金融分野においては、膨大な情報を効率的かつ安全に処理することが常に求められており、ITの活躍余地が極めて大きいと言える。新しいソフトやソリューションが、著しい利便性の向上やコストダウンを実現するケースも稀ではなく、これらの開発企業は、例えベンチャーであっても既存の金融機関と競争できるだけの力を手にすることになる。

2016年に注目すべき銘柄としては、本命のNTTデータ <9613> や野村総合研究所 <4307> などに加え、親会社の電通 <4324> 向けの社内システム構築を安定収益源とするISID <4812> 、ソフトウェア開発キットやオンライン決済のメタップス <6172> 、子会社が決済処理サービスを提供しているGMOペイメントゲートウェイ <3769> などが挙げられる。また決済サービスに関しては、フライトHD <3753> 、やインテリジェントウェーブ <4847> なども注視の対象だ。

7.マイナンバー

すでに所属企業への情報提供が開始されているマイナンバー。機密情報の維持管理が問われる新たな試みだけに、事故の情報やその対策にかかる報道を目にしない日は無いと言って良いほどだ。

情報がまさに財産そのものとなり、盗難や改ざん、破壊からその情報を必ず守らなければならないという社会の到来。2016年は情報セキュリティ製品やサービスを提供する企業がその真価を問われる年でもある。経済産業省によると、情報セキュリティは「情報の機密性、完全性、可用性を維持すること」と定義されており、対象範囲はインターネット経由の情報盗難やデータ改ざんを防ぐ「サイバーセキュリティ対策」から、コンピュータ自体の盗難や、災害による機器の損傷から情報が喪失することを防ぐことなども含め、広範に及んでいる。

マイナンバー関連で注意しておくべき銘柄としては、クラウドによる通信系基盤のフリービット <3843> 、クラウドを含めたITコンサルティングを展開するITbook <3742> 、セキュリティシステムを重視するHPの親会社ジャパンシステム <9758> 、年金系のシステム開発を得意とするDTS <9682> 、公共や金融などの情報処理大手のアイネス <9742> 、ネットワークセキュリティのセキュアヴェイル <3042> 、セキュリティコンサルティングを行うラック <3857> などが挙げられる。

8.自動運転

ドライバーなしで目的地に向け走行する自動運転車は、現在の自動車産業において最も注目を集めているテクノロジーの代表格だ。もとより日米欧の大手自動車メーカーは揃って技術開発を進めているが、有力IT企業や電機メーカーなど、異なった分野からの市場参加も目立っている。日本政府も成長戦略の中枢に自動運転車を取り上げており、技術開発の推進には積極的だ。

関連銘柄として注目されるのは、Googleとの間で音声認識および検索技術の活用に関する契約を締結したクラリオン <6796> 、ハードウェアと通信の融合に欠かせない検証サービスを提供するベリサーブ <3724> 、センサー分野に長けた北陸電気工業 <6989> 、道路情報システムの日本無線 <6751> 、高精度のレーザーセンサー技術に取り組むJVCケンウッド <6632> などだろう。

9.一億総活躍社会

第3次安倍改造内閣の目玉政策として掲げられた「1億総活躍社会」。けれども徐々に明らかになっていくその中身を見ると、要は少子高齢化対策としての「育児・子育て」もしくは「介護」の支援によって、労働人口の減少を食い止めようとしているのだということが分かる。「金を生み出す」人々の数を増やそうと言う訳だ。

その意味で、2016年にはまず「育児・子育て」に取り組む企業が脚光を浴びることになるだろう。具体的には保育事業関連サービスのHD <2749> 、幼児体育指導関連事業とコンサルティング関連事業を手掛ける幼児活動研究会 <2152> 、保育施設のサクセスHD <6065> 、保育や介護の関連商品で有名なピジョン <7956> 、乳幼児玩具などの企画開発を手掛けるピープル <7865> 、子供服や赤ちゃん用品などの専門店を全国に展開する西松屋チェーン <7545> などが注目される。

また、「介護・介護ロボット」などをテーマとする銘柄も注視の対象だ。やまねメディカル<2144> 、メッセージ <2400> 、ツクイ <2398> 、エス・エム・エス <2175> 、ケア21 <2373> 、セントケアHD <2374> 、ネクスグループ <6634> 、CYBERDYNE <7779> 、菊池製作所 <3444> などの動きに気を配っておきたい。

10.電力小売自由化

従来、自然独占とされてきた電気事業において、市場参入への規制を緩和し、市場競争を導入しようとする試みが2016年4月から本格スタートする。無論その目的は、電気料金の引き下げや電気事業における資源配分の効率化を進めることだ。

具体的には誰もが電力供給事業者になることができる「発電の自由化」と、どの供給事業者からでも電力を買えるようにする「小売の自由化」、誰でもどこへでも既設の送・配電網を使って電気を送・配電できるようにする「送・配電の自由化」、既存の電力会社の発電部門と送電部門を切り離すことで競争的環境を整える「発送電分離」、さらには電力卸売市場を整備することなどが掲げられている。

電力自由化の恩恵を受けるのは、次の2つの業界だ。まずは発電事業者である「新電力」。既に500社を超える新電力が誕生している中、注目したいのはイーレックス <9517> だ。バイオマス発電や天然ガスで発電した電力を販売している同社は、既に1000社もの販売代理店を抱えており、2015年6月現在で5000箇所に電力を供給している。

新電力への乗り換えに必要とされる次世代型電力メーターである「スマートメーター」のメーカーにも、大きなチャンスが訪れつつある。このメーターは通信で電力の使用量を検針できるのが特徴で、これまで必要だった目視による検針が不要となる。スマートメーターへの切り替え需要は、例えば東京電力では2020年度までに2700万台に及ぶ電力メーター切り替える計画だが、2014年度末時点での設置済み数は200万台足らず。2015~2020年の間に生まれる需要がいかに莫大なものなのかは明らかだ。

電力メーターシェア1位は大崎電気工業 <6644> で、同社は既に関西電力、九州電力にスマートメーターを納品している。また同業としては、東光高岳 <6617> が子会社の東光東芝メーターシステムでスマートメーターを製造している。(ZUU online 編集部)

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