(写真=PIXTA)
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相続で揉めるというと「お金持ちの世界のことでは」と思う人は少なくないだろう。もちろん、財産があれば揉めるケースは多いだろうが、実際は「お金持ち」でなくても、もめるケースは多々あるようだ。「うちはお金持ちじゃないから関係ない…」と油断していると、突然、自分の身に降りかかってきたときに困ってしまうだろう。そこで、今回は、身近に起こりそうな相続トラブルについて紹介する。

財産の多い少ないは関係ない「相続トラブル」

「うちは相続がかかるほど財産がないから相続対策なんて関係ない」という人は意外と多い。本当にそうだろうか。2012年度の最高裁判所「司法統計年報家事事件編」の統計によると、家財裁判所における遺産か格別遺産分割事件は財産5000万円以下が75.7%を占めるのだ。そのうち財産1000万円以下での事件は32.3%を占める。つまり、相続のもめ事に財産の多い少ないは関係ないのだ。また、今年1月に相続税の基礎控除が引き下げられたためこれまで相続税がかからなかった家庭でもかかる可能性がでてきたのだ。他にも相続に関するトラブルは案外、身近で耳にすることが多い。

どのくらいの財産で相続税はかかるのか

ある1つの家庭を想定してみよう。地方都市の一軒家に住むごく普通の家庭。家族構成は父親、母親、子ども2人だ。父親が会社を定年退職後、すぐに亡くなってしまったとする。財産は手つかずの退職金が2000万円、預金や有価証券で2000万円、土地や家屋の評価が1000万円、生命保険が2500万円で、借金は無かったとする。

生命保険は「500万円×法定相続人の数(3人)」の非課税枠があるため生命保険が相続税に関係してくるのは1000万円になる。つまり全財産で6000万円になる。ここから今年改正になった基礎控除「3000万円+法定相続人の数(3人)×600万円」を引くと1200万円になる。つまり1200万円に相続税がかかってくる。

この家庭の遺族が配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例などを使わなかったとすると、納税額は120万円になる。配偶者の税額軽減を使ったとしても納税額は60万円だ。納税額がそんなに多くなくても税金を納める頭のなかった家庭には荷が重い。相続税は相続開始後10か月以内に相続人の誰でもいいから納めなくてはならない。相続財産に現金が少ない場合でも基本現金で納める必要があるため、どこから誰が払うかを考えておかなければならない。場合によっては納税資金で揉めてしまうこともあるため、納税資金の確保の対策は必要になってくるのだ。このように案外、ごく普通の家庭でも相続税がかかるかもしれないのだ。相続税の改正により、地価の高い都会では相続税の対象者が増えたともいえる。

遺言書がない!遺産分割で兄弟トラブルに

納税に関係なく、もめるのが財産の分け方である。例えば父親、長男家族が同居しており次男家族は他県に家を建てて暮らしていたとする。父親は日ごろ長男夫婦に世話になっているため、孫や嫁に日々小遣いをあげたり生活費を補填してあげたりしていた。また、長男や長男の嫁は、日々父親の病院の送り迎えなど父親に尽くしている。父親から次男へは、実家に来るとき、孫に小遣いをやったりお祝い事の際には何かを買ってあげたりしており、次男は父親の誕生日などにはプレゼントを贈る程度だった。

兄弟仲は子どもの時から良く、けんかもしたことがない。そんなごく一般的などこにでもある普通の家族関係だ。ところがある日突然、父親が亡くなったとしよう。残された財産は長男受取の葬式ができるほどの生命保険と預貯金500万円、これまで長男家族と住んできた父親名義の家と土地1500万円だ。そこに借金が100万円あったとする。

遺言書も何もなかったため、兄弟で遺産分割の話し合いをすることにした。長男と長男の嫁は父親を病院に連れて行ったりご飯を用意したりと父親にずいぶん世話をしてきたのだから、家と土地分を相続するのは当たり前だと思っており、次男には父の残した預貯金の中から借金分の100万円をひいた残金、400万円の半分の200万円ほどを渡せば良いと思っていた。

ところが次男は次男の嫁の希望もあり、兄弟どちらにも同じ権利がある、遺言書もないのだから法定相続分通り半分の財産が欲しいというのだ。今まで長男が父親と一緒に住んできて金銭的に長男家族は父親から恩恵を受けてきたのだから半分でも良いというのは十分譲歩しているという言い分だ。

財産を半分ずつとなると、生命保険は別にして預金500万円分に家と土地1500万円分を合計し、借金分の100万円を引いた残り1900万円を半分とすると、ひとり950万円ずつになる。長男家族は父の残した家と土地に住み続けるとなると、950万円を次男に渡さなくてはならない。しかし次男に渡せるほどの現金が長男には無いなんてこともあるのだ。

「たいして財産がないのだから」と思っていても、こうしてお互いの言い分を通そうともめ事が起きてしまう。親の死後、兄弟交流が全くなくなったなんてこともあるのだ。父親が意思をはっきりと示した遺言書を残してくれたり次男にも納得する金額の生命保険を残しておいてくれたりしたら、ここまで兄弟仲が悪くならなかったかもしれない。

相続対策の第一歩は家系図を書くこと

ほかにも、いらない財産の押しつけあいや知らない相続人の登場、離婚して何年も行方の分からない親の相続が発生したなど、相続に関するトラブルは多い。相続対策の第一歩は家系図を書いてみることだ。家系図を書くと、将来起きるかもかもしれない相続トラブルが見えてくる。ぜひ、相続する側もされる側も早く気づいて相続に備えてほしい。
廣木智代 ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。 FP Cafe 登録FP。

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