2015年10-12月期の実質GDP成長率(*1)は前年同期比(原系列)0.28%減と、前期(同0.63%減)から上昇したものの、2期連続のマイナス成長となった。市場予想(*2)(同0.60%減)を上回ったものの、11月に行政院主計総處が公表した見通し(*3)(同0.49%増)を下回った。
前期比で見ると実質GDP成長率は0.79%増となり、前期の同0.05%増から加速した。また2015年通年の成長率は前年比0.85%増と、2014年の成長率(同3.92%増)や行政院主計総處の昨年2月の見通し(同3.78%増)を大きく下回った。
需要項目別に見ると、政府の景気対策などによって民間消費が持ち直したものの、輸出と投資が改善せず、マイナス成長の主因となったことが分かる(図表1)。
まずGDPの約7割を占める輸出は前年同期比2.80%減と、前期の同3.01%減に続いて低迷し、3期連続のマイナスとなった。最大の取引相手である中国経済の減速や中国企業の台頭、世界的なスマートフォン需要の鈍化などを背景に、主力の電子製品などの財輸出が低迷した。
一方、訪台外客数が10-12月期に同8.7%増と好調であり、サービス輸出は輸出を下支えした。一方、輸入は前年同期比1.64%減となり、前期の同2.24%減からやや上昇した。結果として、純輸出の成長率への寄与度は▲1.07%ポイントと前期の▲0.77%ポイントからマイナス幅が拡大した。
民間消費は前年同期比1.64%増となり、前期の同0.50%増から上昇した。政府による民間消費刺激策(*4)や資源価格の低迷を背景に低インフレ環境が続いたことがプラスに働いたと見られ、通信やホテル・レストラン、教養・娯楽などが底堅く推移した。しかし、労働市場を見ると雇用者数と平均月額給与が鈍化するなど、企業の生産活動減速が雇用・所得環境に悪影響を及ぼしており、消費の回復は鈍い(図表2)。
政府消費は前年同期比0.17%増と、前期の同0.44%減からプラスに転じた。資本形成(投資+在庫変動)は前年同期比0.44%減と、前期の同0.28%減から一段と低下し、2期連続のマイナスとなった。半導体の先進設備や鉄道車両など設備投資が増加した一方で、在庫調整や政府の不動産投機抑制策による住宅市況の悪化から建設投資が不調であったことが投資全体を下押しした(図表3)。
供給項目別に見ると、サービス業が上向きに転じたものの、鉱工業のマイナス幅の拡大が足枷となったことが分かる(図表4)。
鉱工業は、主要産業の製造業が前年同期比4.73%減と、前期の同3.21%減と一段と低下し、3期連続のマイナスとなった。また建設業は同2.58%減(前期:同1.43%減)、電気・ガス供給業は同12.05%減(前期:同5.04%減)とそれぞれマイナス幅が拡大した。
一方、サービス業は、宿泊・飲食業が同2.88%増(前期:同0.91%増)、金融・保険業が同5.55%増(前期:同0.40%減)、卸売・小売業が同1.21%減(前期:同2.62%減)、運輸・倉庫業が前年同期比0.07%減(前期:同0.96%減)と幅広く上昇した。不動産業は同0.42%増(前期:同0.43%増)と僅かに低下した。
先行きは、中央銀行による2会合連続の利下げや政府の消費刺激策が消費や投資の支えとなり、成長率は1-3月期にプラスに転じるだろう。その後は世界経済が回復に向かうなかで台湾の輸出も持ち直すだろうが、中国経済の減速や中国企業の急成長による現地調達の増加、台湾企業の海外進出の増加など構造的な要因が足枷となり、輸出の牽引力は乏しいものとなりそうだ。
また内需も消費刺激策終了によって消費者の購買意欲が減退し、企業の在庫調整が続くなかで雇用・所得環境の改善が遅れるほか、住宅市況の低迷によって建設投資の停滞が続くと見込まれる。結果、2016年の景気回復は緩慢なものとなるだろう。中長期的に成長力が低下するなか、民進党政権がどのような経済政策を打ち出すかは注目と言える。
(*1)1月29日、行政院主計総處(DGBAS)が域内総生産(GDP)の速報値を公表した。
(*2)Bloomberg調査
(*3)11月27日、行政院主計総處は成長率見通しを公表した。2015年の成長率を前年比+1.06%増(10-12月期を同0.49%増)、2016年の成長率を2.32%増とした。前回予測(8月時点)では、2015年の成長率を前年比1.56%増、2016年の成長率を同2.70%増としていた。
(*4)政府は、10月30日に40.8億台湾元の民間消費刺激策を打ち出した。2015年11月7日~2016年2月29日にかけて省エネ製品や通信機器、ネットショッピング、国内旅行に対する補助金支給を行うとした。
斉藤誠
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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