(写真=PIXTA)
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「マイナス金利」の導入が決まり、銀行が日銀にお金を預けると、これまでとは逆に0.1%支払わなければいけなくなった。日銀が描いたシナリオでは、マイナス金利になれば銀行が日銀に預金を預けると負担が増えるため、今よりも貸出金利を低くしてでも積極的に貸し出すのではないかというものだ。そうなれば貸出金利が下がるためより多くの企業が設備投資で借り入れをしたり、多くの人達がローンで家や車を買ったりするのではないか−−。

もちろんそう簡単なことではないのだが、住宅ローンにはどのような変化が出てくるのかをみてみよう。

住宅ローンを「これから借りる人」には朗報

これから住宅購入を検討する方々には朗報となる。変動金利型住宅ローン(変動金利型、3・5年固定金利期間選択型)の金利は「短期金利」の影響を受けて変化するからだ。この短期金利とは銀行同士での資金の貸し借りに使われる「無担保コールレート翌日物金利」のことで日銀の「政策金利」でもある。日銀はこの政策金利をゼロ金利政策でほぼ0%に近づけていた。マイナス金利導入は政策金利に直接的な影響を与えるものではないが間接的に影響を受けてさらに下がった。

変動金利型住宅ローンはこの政策金利に一定率を上乗せして貸し出しているため、わずかながら政策金利が下がった分、変動金利型住宅ローンの金利も下がることになる。

次に、長期固定金利型住宅ローン(10年固定金利期間選択型、フラット35)の金利は「長期金利」の影響を受ける。長期金利とは「新発10年物国債の利回り」であり2月9日には初めて長期金利がマイナスに転じる場面があった。

長期固定金利型住宅ローンもこの長期金利に一定率を上乗せして貸し出しているため、変動金利型住宅ローンと同様に金利が下がる。

フラット35で5000万円のローンを組むと……

短期金利も長期金利も、もともと低金利であったため下げ幅はわずかだが、住宅ローンは借入額が大きいため返済額に与える影響は大きい。例で見てみよう。

2016年1月中旬の長期金利はおおむね0.2%であったが日銀のマイナス金利導入の発表後は0.05%程度へ下落しマイナスにもなった。仮にフラット35の金利が長期金利の下げ幅とほぼ同じく0.2%下がったとして、返済額にどれだけの差が出るかを検証してみたい。

前提条件を借入額5000万円、返済期間35年とし、フラット35が1.6%と1.4%とで比較する。
1.6%の返済月額は155,553円、1.4%では150,654円と、ひと月で約4,900円の差がある。これが35年間(420か月)続くとトータル返済額では約206万円もの差となるのだ。
このようにマイナス金利は思わぬチャンスなのである。よりチャンスを生かすためにはタイミングも大事になる。

金利にはいつ影響するのか 変化のタイミング

住宅ローンには金利の変わるタイミングがある。新たに借りる変動金利は毎月1日や、3月1日と9月1日の短期金利を参考にしてその翌月から新金利が適用される。固定金利型住宅ローンは毎月1日に新金利となる。現在は短期金利も長期金利も下がっているため2016年3月以降のほうがわずかながら低金利になっている可能性があるのだ。

ただし多くの民間金融機関やフラット35の金利は、融資申込日ではなく融資実行時(融資が実際に行われる日)の金利を適用するため、それらを考慮したうえで借入れの申し込みをすると良いだろう。

住宅ローンを「返済中の人」は借り換え検討の価値

マイナス金利導入により、一度は借り換えをしたことがあっても二度目の借り換えを検討してみる価値がありそうだ。

ある条件でシミュレーションしてみよう。2008年に5000万円をフラット35で2.7%、35年返済で借入れ、2012年に1.6%(10年固定金利選択型)に借換えてきたとする。そして2016年3月に10年固定金利選択型住宅ローンが仮に0.9%になっていた場合に借り換えるとどうなるか(借換えに係る諸費用も借入額に含める)

返済月額の変化は、当初18万4152円が一度目の借換え後は16万2313円(▲2万1839円)、二度目の借換えで14万8285円(▲1万4028円)となり年間約17万円節約され、残り27年間では450万円も節約できる。

ちょっと小技を使い、毎月の返済額を現在と同程度にして、返済期間を短くすることでさらなる節約をすることができるのも知っておきたいところだ。

住宅ローンを何パーセントで借りたのかを忘れていることは多い。借りた当時や金融機関から数年ごとに送られてきている返済額一覧表で確認してみてほしい。

それでもない場合は、住宅ローンシミュレーションサイトで、借入額と大体の金利を入力して返済月額をシミュレーションしてみる。実際の月額返済額に近くなるよう金利を上下させてみると良いだろう。

長い目で家計を考えよう 借入金利を選ぶセオリーとは

この度のマイナス金利導入により短期金利・長期金利ともにすぐに大きく上がりそうにない。

しかし日銀も多少の混乱は覚悟の上で物価上昇へ向かうように政策を打っているだから、マイナス金利政策が奏功して資金の循環が生まれ、原油価格の上昇と円安が重なれば物価上昇へと転換していくかもしれない。目先の低金利がこのまま永続すると考えるのは早計だ。

借入金利選択のセオリーである“低金利時や金利上昇期は長期固定金利、高金利時や金利下落期には変動金利”を念頭に置き、住宅ローン金利は長い目で選択をしてほしい。

中谷俊雄 FPオフィスライズ 代表
個人相談、法人の福利厚生メニュー「FP相談室」、各種マネーセミナーを開催、FP技能士資格の取得講座は累積2000時間を超える。著書に『ズバリわかる!FP技能検定3級』(ナツメ社)がある。帯広コア専門学校・札幌学院大学非常勤講師。

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