住宅ローンの選び方、金利選択の着眼点、無理のない返済額などについて解説してきた。最終回の第7回目は、住宅ローンの金利動向について考えたい。
2016年に日銀のマイナス金利政策以降、住宅ローン金利は下落している。確かに、今が住宅ローン借入のチャンスとは言えるかもしれないが、今後もこの低金利動向が継続するとは限らない。
マイナス金利導入によって住宅ローン金利はどのように変化したのか、そして今後は上昇する可能性はあるのかなどについて解説する。
目次
住宅ローンを「これから借りる人」には朗報
これから住宅購入を検討する方々には朗報となる。変動金利型住宅ローン(変動金利型、3・5年固定金利期間選択型)の金利は「短期金利」の影響を受けて変化するからだ。この短期金利とは銀行同士での資金の貸し借りに使われる「無担保コールレート翌日物金利」のことで日銀の「政策金利」でもある。日銀はこの政策金利をゼロ金利政策でほぼ0%に近づけていた。マイナス金利導入は政策金利に直接的な影響を与えるものではないが間接的に影響を受けてさらに下がった。
変動金利型住宅ローンはこの政策金利に一定率を上乗せして貸し出しているため、わずかながら政策金利が下がった分、変動金利型住宅ローンの金利も下がることになる。
次に、長期固定金利型住宅ローン(10年固定金利期間選択型、フラット35)の金利は「長期金利」の影響を受ける。長期金利とは「新発10年物国債の利回り」でありマイナス金利導入直後の2月9日には初めて長期金利がマイナスに転じる場面があり、2018年は0%強から0.15%程度の間を行ったりきたりしている。
長期固定金利型住宅ローンもこの長期金利に一定率を上乗せして貸し出しているため、マイナス金利導入によって、変動金利型住宅ローンと同様に長期固定金利も金利が下がる。
フラット35で5,000万円のローンを組むと……
短期金利も長期金利も、もともと低金利であったため下げ幅はわずかだが、住宅ローンは借入額が大きいため返済額に与える影響は大きい。例で見てみよう。
2016年1月中旬の長期金利はおおむね0.2%であったが日銀のマイナス金利導入の発表後は0.05%程度へ下落しマイナスにもなった。仮にフラット35の金利が長期金利の下げ幅とほぼ同じく0.2%下がったとして、返済額にどれだけの差が出るかを検証してみたい。
前提条件を借入額5,000万円、返済期間35年とし、フラット35が1.6%と1.4%とで比較する。
1.6%の返済月額は155,553円、1.4%では150,654円と、ひと月で約4,900円の差がある。これが35年間(420か月)続くとトータル返済額では約206万円もの差となるのだ。
このようにマイナス金利は思わぬチャンスなのである。よりチャンスを生かすためにはタイミングも大事になる。