富裕層人口が過去約5、6年で2倍に急増している中国。「HNWIs(High-net-worth individuals)」と呼ばれる富裕層たちは、約470万人程度だった2009年から、2014年には約890万人に倍増した。中国のHNWIsは最低でも1000万人民元(約1億7200万円)以上の投資可能な資産を持っている。富裕層人口の増加は止まることを知らず、さらにその上の超富裕層「Ultrahigh-net-worth individuals(UHNWIs)」に区分されている、投資可能資産が約3億4千万円以上の人口規模が拡大してきている。

その多くは50代前半で、彼らの生活は富を得るまでの一般層レベルの生活とラグジュアリーな生活スタイルをミックスさせている人々も少なくない。

2016年1月のフォーブズ誌のThe Word Billionaires(世界の億万長者)によると、中国の不動産王ワン・ジャンリン氏(王健林)は、123億米ドルの資産を持って世界の富裕層ランキング第29位にランクインしている。米投資王ジョージ・ソロス氏と資産額肩を並べることになる。

中国大陸人(香港人を含まない)では、今回のワン氏のトップ30入りが中国初の世界億万長者入りとなる。さて、世の中には上には上がいる。香港の億万長者リ・カーシン氏(李嘉誠)は、さらにリストの上位に位置している。長江実業グループの創設者であり274億ドルの資産を保有、世界17番目の超富裕者となっている。

中国人富裕層のポートフォリオ

中国人富裕層の特徴として、多額の資産を増加させ、次世代へと資産を受け渡すため、プライベートバンクやファミリーオフィスなどを通じて様々な資産クラスへ投資している。

コンサルティング会社 Capgemini と RBC が発表した調査(Wealth Management Global HNWIs sights Survey 2015)によると、中国人富裕層はそれぞれの資産クラスに関して、リスク、及び、利率を見極めバランス良く配分していることが分かる。それぞれ、株式23.1%、債券21.1%、不動産19.4パーセント、未上場株なども含むオルタナティブ資産への投資が13.4%となっている。オルタナティブ資産のうち約2割強が仕組債への投資となっている。ちなみに、現金は投資可能資産のうち約23%となっている。

日本を除くアジア太平洋を見ると株式への投資の平均配分率は22.8%であるが、中国は多少強気に株式へと投資しているようだ。しかし、ここ1~2年の間は、ボラティリティーの高い株への投資を抑え、フィックスド・インカム戦略(割安な債券をロングすると同時に割高な債券をショートしながら、価格が適正価格に戻る過程でリターンを得る裁定取引戦略)に比重をあげていることが分かる。日本ではリスクの高さ、また収益化するまでの時間が長いことから積極的に取り入れられない資産クラスだ。

中国人富裕層はハングリー精神で野望的

先述した中国で一番の金持ちのワン氏は昨年1月にスペインのアトレチコ・マドリードに4500万ユーロを出資しており2割の株を所有している。さらに、マンチェスター・ユナイテッドの株も取得したかったようだが、昨年12月には政府資本のプライベート・エクイティー会社の創始者であるルイガン・リ氏(黎瑞剛)の運営するチャイナ・メディア・キャピタル(華人文化産業投資基金)とプライベート・エクイティー会社シティック・キャピタルとの共同入札で惜しくもイギリス屈指のサッカーチームを獲得することができなかった。

ルイガン・リ氏は中国富裕層リストにはまだ名を連ねないが、ジャーナリストで、ニューヨークコロンビア大学留学しメディアを研究し、学術および商業の知識を蓄え、帰国後から上海のメディア業界を操るトップ実業家として成功の道を辿っている。一方のワン氏は典型的な富裕事業家だ。元軍人で政府の役人を務めたのち不動産会社から事業を起こし今の財を築き上げた。豊かになった日本だからこそ、中国人のようなハングリーで野望的な富裕層の話はあまり耳にしないのではないだろうか。(香港在住 ジャーナリスト)

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