今回ZUU online 編集部から提示された「想定相談者」は、30代の独身ビジネスマンで年収は1500万円。そろそろ結婚を考えており、その後の子供の教育や両親の介護、定年退職後など10年、20年先の将来を見据えた運用のアドバイスを求めている。よって、中長期的な資産形成を考えつつも、短期間にライフイベントが多数発生する可能性が高いことから、ハイリスクな資産を少なめにして、比較的流動性の高い資産を中心にポートフォリオを組んでいきたい。

なお、今回の想定では年収が1500万円と、一般的なサラリーマンの年収よりも多いと思われる。ただ、数百万程度の年収の場合は、ライフイベント前に短期間で大きなリターンを狙う必要も出てくるはずだ。その場合は、必然的にボラティリティの高い資産を増やす必要が出てくるだろう。

30代、年収1500万円の「自分ポートフォリオ」

筆者が推奨する「自分ポートフォリオ」は以下の通りである。

(1)日本株   30% iシェアーズ MSCI 日本株最小分散 ETF <1477>
(2)米国債   30% iS米国債ETF(BARC 米10年国債) <1363>
(3)先進国株式 30% i シェアーズ先進国株ETF(MSCIコクサイ) <1581>
(4)国際商品  10% 純金上場信託(現物国内保管) <1540>

iシェアーズ MSCI 日本株最小分散 ETFは、リスクを最小化するように銘柄選定および銘柄のウェイト設定を行う「MSCI日本株最小分散インデックス」との連動を目指すものだ。「最小分散」投資とは、銘柄の組み合わせや、組み入れ比率を変化させることでポートフォリオ全体の価格変動リスクを抑える投資手法である。投資の世界では、標準偏差の2乗である「分散」をリスクの意味で使用し、横軸にリスク、縦軸に期待リターンをとって同一リスクのポートフォリオの中でリターンが最大となるポートフォリオを結んだ、効率的フロンティア曲線上でリスクが最小となる。こういった理由から、日本株を組み入れる上で低リスクな本ETFを組み入れた。なお、信託報酬も0.19%と安く、合理的な選択といえるだろう。

iS米国債ETF(BARC 米10年国債)は、残存期間7年以上10年未満の米国財務省証券で構成される指数(バークレイズ米国コクサイ7-10年インデックス)と同等水準の投資効果を目指しているため、実質的に同期間の米国債に投資している状態となる。株式と比較して債券は低リスクであること、また新興国と比べても先進国(米国)は低リスクとなるため、当該ETFを選択した。為替リスクが発生する点には注意が必要となるが、それ以上に今回の想定読者の場合、年収が1500万円と、円のキャッシュフローが潤沢な点がリスクとなる。従って、元本割れの有無ではなく、デフォルトリスクの低さという意味で安全な外貨資産と考え、米国債を選択した。なお、信託報酬も0.2%であり、低コストの部類に入る。

iシェアーズ 先進国株ETF(MSCIコクサイ)は、海外の先進国市場の株式に広く分散投資するETFで「MSCI KOKUSAI(コクサイ)インデックス」への連動を目指している。手軽に分散効果が得られる点から選択した。為替ヘッジがないため、前述の米国債ETF同様、為替リスクを伴うが、円資産を少なくしつつ、世界の株式市場に連動する形でリターンを追及できることから組み入れた。ただ、当該インデックスは地域別のエクスポージャーとして、米国が60%以上と、米国株の動向に大きく左右される点には注意が必要となる。なお、信託報酬は0.25%と比較的低いといえるだろう。

円資産が抱える究極のリスクに備える

純金上場信託(現物国内保管型)は、名称のとおり金価格に連動するETFだ。コモディティへの投資は非常にリスクが高く、配当金などもないため、ハイリスクな商品を排除するという、当初の想定から逸脱しているように感じるかもしれない。しかし、日本の若い世代の究極のリスクは、ハイパーインフレや円資産の価値下落、年金制度の崩壊などではないだろうか。

このような事態となれば、いくら円ベースでの年収が多く貯蓄していたとしても、意味はなくなるはずだ。未だ、金融緩和政策を続け、財政再建に積極的ではない政府の方針を考えれば、金本位制ではなくなったとは言え、実物資産への10%程度の投資は必要だろう。当該ETFは日本国内の倉庫に信託財産である金の現物が保管されており、1キログラムから実際に取得することも可能だ。信託報酬は0.49%と、他の金ETFに比べると安いとはいえない。しかし、円ではなく、金で物を買う必要がでてくるような事態が発生した場合に、国内の倉庫で保管され、少量から引き出しが可能な点を重視した。

不測の事態が起きたらどうする?

当該ポートフォリオで考えられる不測の事態は、株式比率の高さ(60%)からくる資産の目減りだろう。リーマンショックのような暴落が発生すれば、リスク資産は日本、先進国、新興国関係なく、すべて売られる展開となる。米国債と金のETFを保有していることで、ある程度目減りを防ぐことは可能であるが、その場合は金ETFの比率を引き上げることで対応したい。同時に米国株が売られる展開となった場合、先進国株ETFの米国株比率の高さから影響を受けやすいため、米国債ETFの比率を増やすことも検討すべきだろう。(ポートフォリオマネージャー 澁澤龍)

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。