(写真=PIXTA)
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米連邦準備理事会(FRB)は2015年12月16日、9年半ぶりに政策金利を引き上げた。今、改めて考えてみると、原油や中国の状況もさることながら、米国が金融引き締めの局面に入ったことが世界的なリスクオフの引き金になった可能性が高いのではないだろうか。米国の過去の利上げ局面と株価の動きを振り返ってみたい。

米国の利上げは緊急時のゼロ金利をもとに戻す行程

FRBは、リーマンショックから立ち直るために、政策金利であるFF金利の誘導目標を0〜0.25%の実質ゼロ金利に引き下げ、都合3度にわたる量的緩和(QE)で、大々的な金融緩和を行った。その結果、FRBが景気回復の指標としていた雇用は改善し、失業率は5.0%の完全雇用まで回復した。株価も金融緩和の流動性相場でリスクオンとなり、NYダウは2009年のリーマンショック後の安値から2倍以上の値上がりとなった。

FRBの昨年12月の利上げは、リーマンショック後の緊急事態に導入したゼロ金利を解除し、金利正常化に向けたステップを踏み出すのが狙いだ。金利を正常化しておけば、また金融市場にストレスが高まった時に利下げできるからだ。

ただ、2014年5月には米国の量的緩和が終焉するとの懸念で世界の株式市場やジャンク債市場が大幅調整し、2015年夏にも米国の利上げ懸念で世界の株式市場やジャンク債市場が大幅調整したのは記憶に新しい。2016年の株式市場の調整も、米国の利上げペースに焦点が集まっている。

オイルショック時を除いて利上げから2ヶ月でS&P500は底打ち

第二次世界大戦後に米国が1年以内に2回以上利上げを行った局面は10回ある。過去10回の利上げ局面でのS&P総合500種指数(S&P500)の動きを平均化すると、第1回目の利上げ開始日の1ヶ月前にピークを打ち、利上げ開始日から2ヶ月後には底入れして反発するパターンとなっている。その後、S&P500は、利上げ開始1年後には平均で6.7%上昇している。利上げは、通常、景気に自信があるときにやるため、利上げ懸念から利上げ前に株価は一旦ピークアウトするものの、景気の続伸を確認することで株価が上げていくパターンとなっているのだろう。

ただ、第一次オイルショックの1973年は、株価は2ヶ月では底打ちせずに、利上げとともに調整を続けた。そうしてみると、今回もキーとなるのは原油の動向だ。原油がさらに下落するようなら、調整が長引く可能性があるが、原油さえ落ち着けば、すでに利上げから2ヶ月が経過しており日柄的にはすでに底打ちしていてもおかしくない。

NYダウも直近3回の利上げ局面では2〜4ヶ月で底打ち

直近の3回の利上げ局面は、①1994年、②1999年、③2004年の3回だ。直近3回の利上げの動向とNYダウの動きを見てみよう。

①1994年2月から1995年2月まで12ヶ月でFF金利を3%から6%まで7回利上げ
NYダウは利上げ開始から2ヶ月後に底打ち、調整幅7.2%

②1999年6月から2000年5月まで11ヶ月でFF金利を4.75%から6.5%まで6回利上げ
NYダウは利上げ開始から3ヶ月半後に底打ち、調整幅 8.7%

③2004年6月から2006年6月まで24ヶ月でFF金利を1%から5.25%まで17回利上げ
NYダウは利上げ開始から4ヶ月後に底打ち、調整幅6.6%

④今回 2015年12月から利上げ開始 2ヶ月経過、追加利上げはまだなし

直近3回の利上げでは、利上げ開始日から2〜4ヶ月で底打ち、ダウで6〜9%程度の調整となっている。今回の下落局面を、2月11日が底と仮定すれば、利上げ開始から2ヶ月の経過、調整幅は11.8%となり日頃的にも値幅的にも過去の利上げ局面と比較しても遜色がないところまでは来ている。

引き締め開始時の経済レベルは高くはないので注意

今回、FRBが利上げに踏み出したのも、経済情勢が金融危機後の状況から回復したと判断したためだ。ただ過去3回の利上げ開始時点と今回の利上げ開始時点を各種経済指標で比較してみると、雇用統計こそ高水準だが、経済成長率や住宅着工件数は低く、経済の強さには疑問符も残るのは事実だ。一方、NYダウなど株価の位置は過去と比べても相対的に高く、FF金利のスタート地点は低い。

今回の利上げは、経済回復に自信をもっているからというよりも、早く通常時の金利に戻したいとのFRBの思惑が先行していることは間違いないようだ。したがって、今までの利上げ局面以上に、米国景気動向には神経質にならざるを得なそうだ。

現在、市場のコンセンサスは、世界景気後退懸念、原油安懸念で金融市場が崩壊気味であることから、FRBは年内にもう一度程度しか利上げできないとの見方となっている。景気回復が腰折れすれば、米国が再び金融緩和に動く可能性すらあると指摘するエコノミストもでてきている。

米国株の買いチャンスか

原油と景気回復の確認という条件が付くものの、過去のパターンからするとすでに米国株式相場は、底入れしている可能性も高い。利上げ開始日である2015年12月16日のS&P500は2073ドルだった。過去10回のS&P500の利上げから1年後の上昇率6.7%をあてはめると、今年12月のS&P500指数は2211ドルまで上昇することになる。まだ14%近い上昇が見込めるわけだ。少なくとも米国経済の巡航速度は、現在の日本よりは高い。米国株投資を分散投資で始めるにはいいタイミングなのかもしれない。

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