税理士,公認会計士,プロ,転職
(写真=PIXTA)

世界にはプロフェッショナルファームと呼ばれる企業集団がある。弁護士事務所・会計事務所・税理士法人及びその他のコンサルティング会社などのことで、一般の事業会社とは区別されている。

本稿の筆者はプロフェッショナルファームである税理士法人に勤務経験が有り、現在事業会社に勤務している。両組織での体験を通して感じた違いとは。

成果物とフィードバック

プロフェッショナルファームは専門的なサービスを提供する組織で、弁護士・会計士・税理士などの有資格者が多く、企業買収・上場支援・国際税務などのサービスを提供する。
筆者は事業会社に新卒として就職し、10年程営業を経験した後、米国公認会計士の資格を取得し税理士法人に転職。およそ3年勤務した後、事業会社の税務担当ポストに転職した。

税理士法人に入ってすぐ驚かされたのは、作成を命じられた社内外向けの文書・メール・提案書に求められるクオリティ、その要求水準の高さだった。事業会社と税理士法人の業務上の違いを1つ挙げろと云われれば、迷わずこの「成果物」に対する要求レベルの高さを挙げる。

クライアントの目に触れる一切の成果(文書、メール、提案書)は構成、文言から色彩に至るまで、すべて上司が綿密にチェックする。社外の関係者の目に触れるものだけでなく、社内メールなどのコミュニケーションについても同様のクオリティの高さが要求された。この成果物のクオリティが一定レベルに達しないと、昇格も昇給もない。

税理士法人がモノを売る職業ではなくサービスを売る職業であることから、クライアントに対して他社との差別化を図れるのが唯一成果物であることを考えると、そこに心血を注ぐのは当然である。

成果物が上司の期待値を下回った時の上司からのフィードバックのクオリティは非常に高かった。どこをどう修正すべきかだけでなく、その理由や仕事の進め方についてまで綿密なアドバイスをもらえた。

キツい勤務体系に耐えるのは「パートナー」になるため

税理士法人の勤務は想像を絶するものだった。成果物のクオリティを高くするため時間を掛け、睡眠時間が減ってクオリティが下がるという負のスパイラルによく陥った。残業時間が長く、まともに始業時間に出社する人間は少なかった。成果物さえ出していれば朝どれだけ遅れても何も言われなかったが、何故か成果物を出せない人間も頻繁に遅刻していた。

なぜ睡眠時間を削り、高い成果物目標を押し付けられてまで皆働くのか。それは「パートナー」になるためである。パートナーとなれば30代前半で年収数千万円も珍しくはない。税理士法人のみならずプロフェッショナルファームの企業文化を表した言葉として「Up or Out」(昇格か退職か)がある。

事業会社であれば、ある部署で芽が出なくても他部署に異動ということもあり得るだろうだ、専門的なサービスを提供しているプロフェッショナルファームには異動という概念はほぼない。数年経って見込みがなければ自主的に転職するか、仕事が回って来ず退職を余儀なくされるかのいずれかである。

事業会社に再転職して感じたこと

筆者は税理士法人に3年ほど勤務したが、その間の業務の密度といったら、その前に勤めていた事業会社での10年間に匹敵するものだった。

「税理士法人の業務経験が有れば事業会社で仕事を簡単に回せるのか」と聞かれても、必ずしも「イエス」とは言えない。税務に関する業務は、事業会社においてはほんの一部の業務に過ぎない。

今の筆者に求められているのは、レベルの高い成果物を出すことや資金と人的リソースをふんだんに投入してでも税務リスクをゼロにすることではない。事業の方向性とバランスを取りながら、限られたコストと人員の制約の中で税務リスクを会社の事業推進に支障の無い範囲に納めることである。

事業の方向性がどうあるべきかを嗅ぎ取る感性やバランス感覚は、事業会社固有のものがあり、税理士法人の業務を通じては習得できない。

俯瞰的に事業を見る目とバランス感は、事業会社で複数部署を経験して初めて身に付くものだと思う。税理士法人は税法という枠組みで物事を見る傾向があり、いわゆる“専門馬鹿”になりやすい。専門性が必要な時代とは言われているが、両社を経験してやはり事業には専門性とバランス感の双方が必要だろう。(ZUU online 編集部)

【オススメ記事 PR】
「従業員からの支持率が高いCEOランキング」
世界の15歳調査、お金のリテラシーが一番あるのは「中国」
トップ企業は時給7000円超 「上場企業の時給ランキング2017」
「長く快適に働ける」企業トップ20 1位の企業「転職は厳しい」の声も
お金を稼ぐには地理を学べ 代ゼミの名物地理講師が説く「経済を地理から学ぶべき」理由