生命保険,相続税対策
(写真=PIXTA)

相続対策と耳にすると、財産がない自分には関係ないと思いがちである。しかし、相続とは亡くなった先代の財産を次世代が受け継ぐという意味で財産の多い少ないは関係ない。

相続における問題は財産配分に多く、場合によっては揉め事が勃発することもありうる。親が亡くなってから兄弟姉妹が疎遠になったなんてことも珍しくない。また、借金を残して亡くなったらそれも相続だ。プラスの財産は相続したいが、できれば借金は相続したくない。そんなさまざまなシーンで生命保険が一役買ってくれる場合があるのだ。ここでは、相続のシーンにおける生命保険の有効な使い方について紹介しよう。


現金か生命保険か?

1000万円の現金があったとしよう。このまま残して亡くなれば財産は1000万円のまま。では、この1000万円を仮に生命保険で活用したらどうなるだろうか。一時払いの終身保険に加入するとする。加入年齢にもよるが、払った保険料より保険金が大きくなる。

例えば60歳の男性がある保険会社で1000万円の一時払いの終身保険に加入したとしよう。この保険に支払う保険料は約900万円で済むのだ。亡くなった際に1000万円残そうとしていたら現金だとそのまま1000万円を残すだけだが保険を活用すれば約900万円で済む。そのため、生きている間に自分で100万円を多く使えるのだ。もしかしたらそのお金で海外旅行を楽しんだり、中古自動車が買えたりするかもしれない。

マイナス金利のご時世でも生命保険はお金を増やす役割をしてくれるかもしれないということだ。現金で残すか生命保険で残すか、どちらが得をするのか比較してみるのも面白い。親にも葬儀代を残してくれるなら生命保険を活用すると親が使えるお金が増えるかもしれないからお得だと子供から勧めても良いかもしれない。

ただし、こういった保険は告知や診査で健康状態を問われるため持病を持っている方には向かないこともある。

生命保険は受取人が指定できるのが魅力

現金で残すか生命保険で残すかの判断基準に「受取人の指定ができる」ということがある。現金は残された人がほかの相続財産(不動産や借金)と合わせてどう分けるかを相続人で話し合うのが一般的なため、誰にどのくらいの現金が渡るかは被相続人の死亡後すぐには決まらない。その分け方で揉めたら現金を手にするのは遠い先になる可能性もある。中には揉めていて10年以上相続財産が動かせないなんてケースもある。

だが、現金を生命保険にした瞬間に、「本来の相続財産」から「みなし相続財産」に変わる。ほかの財産と分けて考えられるのだ。そして生命保険の場合はその財産の行く先に名前を付けられる。

生命保険の受取人を指定することで、受取人固有の財産になるわけだ。この生命保険という「みなし相続財産」は請求すれば1週間程度で受取人の口座に振り込まれる。ほかの財産の分け方で揉めていても生命保険は関係なく手にすることができるのだ。葬儀などのすぐに必要なお金にも保険は役立つことになる。

また、相続放棄をすると、借金がある場合は払わなくてもよいが、相続財産がもらえない。生命保険はそれとは無関係でもらえるのだ。ただし、相続放棄をした場合、生命保険の非課税枠は使えずダイレクトに相続税がかかってくるので注意は必要だ。

生命保険の非課税とは?

税金を生命保険に変えた方が良いとされる理由に「生命保険の非課税枠」がある。相続財産に生命保険がないと基礎控除だけだが、生命保険があると生命保険の非課税枠が生まれるのだ。相続税の基礎控除と生命保険の非課税枠は以下のとおりである。

・相続時の基礎控除
3000万円+(600万円×法定相続人の数)

・生命保険の非課税枠
500万円×法定相続人の数

相続財産が現金や不動産で1億2000万円の場合で3人の兄弟で相続したとすると、相続財産の基礎控除は3000万円+(600万円×3人)で4800万円だ。1億2000万円から4800万円をひいて残りの7200万円に相続税がかかってくることになる。

では、相続財産が現金や不動産で1億円、保険で2000万円の場合はどうだろう。基礎控除4800万円のほかに生命保険の非課税枠(500万円×3人)で1500万円が差し引かれる。合計すると6300万円だから、残り5700万円に相続税がかかる計算だ。どちらのほうが相続税の額が少ないか一目瞭然だろう。

契約形態によってかかる税金が違う

死亡の生命保険は契約形態によって受け取る保険金にかかってくる税金が違うので注意は必要だ。契約者(お金を払う人)と被保険者(保険の対象者)、保険金受取人が誰なのかで変わってくる。

例えば、被相続人「夫」が契約者・被保険者で、保険金を受け取るのが「妻や子供」の場合は「相続税」になるが、契約者が妻で被保険者が被相続人の夫で受取人が妻の場合は所得とみなされ「所得税(一時所得)」が課せられる。また、妻が契約者で被相続人である夫が被保険者、保険金の受取人が子供になると「贈与税」が課せられるのだ。

つまり、契約者が死亡して別の誰かに保険金が渡れば相続税、契約者が生きている間に契約者自身が保険金を受け取れば所得税、契約者が生きている間に別の誰かに保険金が渡れば贈与税になるということ。

案外、税金の事を気にせずに保険契約を結んでおり、あとでトラブルになるケースもある。これを機に自分や親に合った保険を検討したり契約形態の確認をしてみてはいかがだろうか。

廣木智代ファイナンシャルプランナー(CFP)
結婚後、家業のスナックで手伝いをしていたが母の引退と共に廃業。家計の苦しさを埋めるための我が家の保険の見直しをきっかけに、お金に賢くなるお手伝いをするべくCFP資格を取得。心と体とお金の健康バランスを軸に、個別相談、セミナー、執筆を展開中。 FP Cafe 登録FP。

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