世界中でインフレが加速し円安が急激に進む中で、外貨の売買高が増えている。こうした動きを踏まえ、自分自身の老後や、死後遺される家族のために外貨預金を始めた人も少なくないだろう。今回は、外貨預金と相続に関する基本事項を解説する。
そもそも「相続」「相続税」とは ?
相続とは、亡くなった人の財産を特定の人に引き継ぐことを指す。亡くなった人が「被相続人」で、財産を受け取る人が「相続人」だ。財産は、相続人にとってプラスのものばかりとは限らない。例えば、被相続人が残した債務など、法律上の義務も財産に含まれるからだ。
相続税は、被相続人の財産のうち、預金など金銭的価値としてプラスのものから債務などマイナスなものを差し引き、その額が一定水準を上回ったときにかかる。
一定水準というのは、課税遺産総額を計算するために財産の合計額から差し引ける基礎控除額のことだ。相続する財産が基礎控除額を下回っている限り、相続税はかからない。基礎控除額は以下の計算式で求められる。
この基礎控除額が大きいために、実際に相続税がかかるケースは少ない。例えば、2019年に相続税がかかったのは、亡くなった人のうち8%程度だ。
外貨預金を相続するときに「相続税」はかかる ?
外貨預金も被相続人の財産であることに変わりない。相続税がかかるかどうかは、財産の合計額が基礎控除額より大きいか小さいかによる。
相続税の計算は邦貨に換算して行うため、外貨預金が日本円でいくらになっているかが重要だ。
外貨の評価はTTBで行う
外貨預金の評価にあたっては、対顧客電信買相場 (TTB) が用いられる。TTBはTelegraphic Transfer Buying rateの略で、金融機関が顧客から外貨を買い取る際に適用される交換レートを指す。
ちなみに為替相場には、TTB以外にTTS (対顧客電信売相場:Telegraphic Transfer Selling rate) とTTM (対顧客電信相場仲値:Telegraphic Transfer Middle rate) がある。TTSは金融機関が顧客に外貨を売る際に適用される交換レートで、TTMはTTBとTTSの平均値だ。
金融機関は為替取引の中で為替手数料を収益にしており、例えばTTMが1ドル100円のとき、TTBを1ドル99円、TTSを1ドル101円として、2円分の手数料を生じさせる仕組みだ。
このように外貨の交換レートには複数の種類があるため、評価額を計算する際には注意したい。
何日付の相場で評価を行う ?
為替相場は日々変動する。そのため何日付のTTBで評価を行うかによって、評価額は大きく変わる可能性がある。
外貨預金を評価する際に用いられるTTBは、原則として相続開始日 (被相続人が死亡した日) の最終TTBだ。為替市場が土日などで閉まっている場合は、直近日の最終TTBが適用される。
例えば1万ドルを相続する場合、相続開始日が土曜日で、前日金曜日に相続人の取引金融機関が公表したTTBが1ドル130円ならば、評価額は130万円となる。
外貨預金に関する明細書はどのように申告する ?
相続税を納める必要があるときは、相続税の申告書を提出しなければならない。申告書には種類、細目、利用区分・銘柄等、所在場所等、価額、取得した人の氏名、取得財産の価額を記入するが、外貨預金の場合は数量、単価も記載する。記入事項は以下の通りだ。
種類 | 現金預貯金等 |
細目 | 現金預貯金等 |
利用区分・銘柄等 | 普通預金 |
所在場所等 | 金融機関名、本店・支店の名称 |
数量 | 相続した外貨預金 (例:$10,000) |
単価 | 相続開始日のTTB (1ドル130円であれば「130」と記入) |
価額 | 数量×単価 (例:1,300,000) |
取得した人の氏名 | 相続人の氏名 |
取得財産の価額 | 外貨預金をすべて相続する場合は価額と同じ |
納税は日本円で行う
外貨預金を相続して相続税を支払う際は、外貨で納税できない点に注意が必要だ。
納税は日本円で行わなければならないため、日本円で納税分を用意できない場合や、相続した外貨預金を納税に充てる場合は日本円に両替する必要がある。
両替時のTTBは相続開始日のTTBから変動している可能性が高い。相続開始日からレートが円高に動いていれば受け取れる日本円は減少し、反対に円安に動いていれば受け取れる日本円は増加する。遺産を両替する際には、為替相場の状況をよく確認しよう。
日本円への両替時は為替レートに注意
外貨預金は現金や土地などと同様に、財産として相続税の課税対象となる。外貨預金は日々の為替レートに応じて評価額が変動するため、納税に備えて日本円に両替する際は注意が必要だが、気をつけるべき点さえ把握しておけば、過度に心配する必要もないだろう。
(提供:大和ネクスト銀行)
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