厚生労働省が2024年7~8月に行った調査によると、賃金改定率は+4.1%となり、日本人の年収増加が期待されている。しかしインフレが継続していけば、将来的に現預金で持っている資産額が増えたとしても実質的な価値は今より目減りすることになりかねない。生活費の負担が大きくなれば、なおさら目減りのリスクは高まる。

こうした状況で資産価値を守る手段として注目したいのが「外貨預金」だ。本記事では、円預金だけに頼らず外貨預金も行って将来の安心を手に入れる方法について解説していく。

2024年「賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表

年収は上昇、でも資産価値は減る ? 今こそ考えたい「外貨預金」という選択肢
(画像=takasu / stock.adobe.com)

2024年10月、厚生労働省が発表した「令和6年 賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果では、1ヶ月の1人あたりの平均賃金額を示す「1人平均賃金」は+4.1%となり、引き上げ率は1999年以降で最も高い数字を示した。金額でいうと1万1,961円の増加だ。

産業別の改定率

産業別の改定率は、業種によって2.5~5.9%と幅がある。最も上昇幅が大きかったのは「鉱業、採石業、砂利採取業」で+5.9%、最も上昇幅が小さかったのは「医療、福祉」で+2.5%だった。

【2024年における1人平均賃金の改定率】

産業改定率
鉱業、採石業、砂利採取業+5.9%
建設業+4.3%
製造業+4.4%
電気・ガス・熱供給・水道業+4.3%
情報通信業+4.3%
運輸業、郵便業+3.2%
卸売業、小売業+4.3%
金融業、保険業+4.6%
不動産業、物品賃貸業+4.0%
学術研究、専門・技術サービス業+4.4%
宿泊業、飲食サービス業+3.7%
生活関連サービス業、娯楽業+3.2%
教育、学習支援業+2.7%
医療、福祉+2.5%
サービス業 (他に分類されないもの)+3.2%

ちなみに「労働組合の有無」による分類では「あり」が+4.5%、「なし」が+3.6%と差が出ている。

賃金上昇だけでは追いつかない ? インフレ対策としての外貨預金

このように差はあるものの、全産業で賃金は上昇している。しかし、賃金の上昇で現預金など円建ての資産額が増えても、上述したようにインフレが続けば実質的な資産価値は目減りしかねない。

例えば、10年間で物価が20%上昇すると、現在1万円で購入できるものは10年後には1万2,000円になる計算だ。この場合、現預金が100万円あるとしても、10年後に120万円以上に増えていなければ、同じ商品を購入できる価値を維持できない。

具体的には、商品が1個1万円のとき100万円で100個購入できたとしても、価格が1万2,000円に上昇した後では、資産が110万円に増えたとしても91個しか購入できない。つまり、資産額が増えても、インフレの影響でその実質的な価値が失われる可能性があるのだ。

こうした資産価値の目減りリスクに対応するには、効果的な対策を講じることが重要だ。その一つとして注目されるのが、日本円以外の通貨を保有する「外貨預金」である。

外貨預金の魅力

外貨預金は、日本円より高い金利が得られる資産運用の手法の一つだ。ただし、魅力はそれだけにとどまらない。ここでは、外貨預金の3つの魅力について紹介する。

為替差益のチャンス

円安が起きると外貨の価値が上がるため、為替差益が得られる。例えば1米ドル100円から1米ドル120円へ円安になった場合、単純計算で20%の含み益が発生する (為替手数料や税金などは考慮しない) 。

リスク分散効果

通貨の価値は、別の通貨に対して常に変動し、通貨ペアによってその価値の変動もさまざまだ。そのため、日本円だけに頼らず米ドルやユーロなどの複数の通貨を保有することで、保有通貨価値の下落リスクの分散を図ることができる。

インフレに強い

そして何よりもインフレに強いことが外貨預金の魅力だ。例えば、外貨預金で年利2%ほどのリターンを得られるとする。1,000万円分の外貨保有で資産が20万円増えるイメージだ。この場合、年間2%のインフレが起きたとしても、外貨預金のリターンで物価高騰のダメージを相殺できてしまう (為替手数料や税金などは考慮しない) 。

ただし、外貨預金にもリスクがないわけではない。外貨を保有したときよりも為替レートが円高になれば、含み損を抱えることになる。また、円と外貨を交換する際は基本的に為替手数料が発生するため、頻繁な出し入れはコストを増やす原因になる。これらのリスクを避けるためには、預け入れや引き出しのタイミングで為替レートを確認し、手数料を含めたトータルコストを意識することが重要だ。

来たる将来に向け、外貨預金を始めよう

外貨預金は、インフレが進行する状況下で大切な資産を「価値の目減りリスク」から守る有効な手段となり得る。収入が増えたこのタイミングでリスクを十分に理解したうえで外貨預金を検討することで、将来に備えた資産形成の可能性を広げることができるだろう。

円建て資産だけに依存せず、外貨を活用すれば、変動する経済環境にも柔軟に対応できるようになる。これを機に、将来の安定を見据えた資産運用を始め、経済的基盤をより強固なものにしていきたい。

(提供:大和ネクスト銀行


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