モバイル決済は、スマートフォンなどの携帯端末で支払いを完結する方法です。日本では、現金やクレジットカードなどの決済方法に比べると、まだ海外ほど普及していません。しかし、その利用が今後急速に広がる兆しが出てきています。その現状を見ていきましょう。
世界で有数の「現金社会」である日本
世界的に広く知られているモバイル決済といえば、グーグルのAndroid Pay、アップルのApple Pay、アリババ・グループのAlipayなどがあります。その決済方式は、ICチップを内蔵したモバイル機器を店頭の専用端末にかざしたり、お店あるいは買い物客のQRコードを読み取ったりするなど、方法はさまざまです。ちなみに、日本では10年以上前から携帯電話をお財布がわりにするサービスが利用されていますが、これもモバイル決済のひとつです。
日本銀行が2017年6月に「モバイル決済の現状と課題」と題して発表したレポートによると、日本においてモバイル決済を「利用している」と答えたのはアンケート調査全体のわずか6.0%にとどまりました。それに比べて、中国都市部の消費者を対象に実施された調査によると、回答者の98.3%が過去3ヶ月の間にモバイル決済を「利用した」と答えたそうです。また、ケニアでは、携帯電話加入者の約76.8%がモバイル決済を利用しているとの調査もあります。
先進国のドイツや米国などでもモバイル決済の占める比率が低いとされていますが、その一方で新興国や途上国の一部では急速に普及しているともいいます。その理由として、これらの国ではもともと「銀行口座などのベーシックな金融インフラや固定電話網の普及が十分でない中、携帯電話が爆発的に普及した」ことがあげられています。
ここでいうインフラにはATMも含まれるでしょう。日本では、金融機関以外にも駅や大手の小売店、コンビニエンスストアにATMが設置されるなど、手軽に現金を引き出すことができます。現金社会だからこそ、これだけATMが多いのかもしれません。
モバイル決済は経営効率化などのメリットもある
前出のレポートによると、日本においてモバイル決済を使いたがらない人の理由としては、「セキュリティ・紛失時など安全性に不安がある」「クレジットカードなど、他の決済手段の方が利便性が高い」「支払いは現金でしたい」などが上位にあがっています。
しかし、モバイル決済にはメリットも数多くあります。まず、消費者にとっては主に4つのメリットがあげられるでしょう。
- 支払い待ち時間が減る
- 家計管理が容易
- パスワードの設定などで不正利用を防止できる
また、店舗側としても、大きく分けて3つのメリットがあります。
- レジ処理や釣り銭の用意などを省力化できる
- 売り上げ・帳簿管理の手間が省ける
- 各決済手段専用の決済処理用機器などの購入が不要になる
一部の大手外食チェーンで試験的に「現金お断り」がスタートして話題になるなど、キャッシュレスに向けた取り組みへの関心が大きく高まってきた一面もあります。経営効率の向上に加えて、サービスレベルの改善につながることも期待ができそうですね。
モバイル決済のこれから
経済産業省は、政府が2014年6月に改訂した「日本再興戦略」に沿い、同12月に「キャッシュレス化に向けた方策」として、官民の広範な分野で決済の利便性・効率向上を図るための対応策をまとめています。
ここでは、2020年の東京五輪開催に伴う外国人観光客の増加などを念頭に、海外の決済手段にも対応した端末やPOSシステムの充実も目指しています。この「方策」は、海外の決済手段が使えないことで生じる日本の機会損失を減らすことも含め、人手不足の緩和や経済の効率化・底上げに貢献することになりそうです。
このように、モバイル決済はその一環にとどまらず、大きな一助になる可能性を秘めています。しかし、これを広く普及させるには、安全性に対する不安を一掃し、いつでもどこでも使えるという利便性を大きく高めることが欠かせないでしょう。今後の技術革新に期待し、賢く生活に取り入れたいところですね。(提供=auじぶん銀行)
執筆者:株式会社ZUU
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