シェアリングエコノミー
(写真=PIXTA)

「暮らすように旅をしよう」というAirbnb(エアビーアンドビー)や「いつでもご希望の乗車を!」というUber(ウーバー)の存在はご存じの方も多いでしょう。両者は「シェアリングエコノミー(共有型経済)」の旗手と言われており、共通点は、インターネットをサービスの基盤としていることです。

2016年は「シェアリングエコノミー元年」とも言われます。その意味は、一体、何でしょうか?

「限界費用ゼロ社会」に向かう世界経済

世界経済は資本主義の仕組みで回っています。利潤が利潤を産む仕組みであり、新しい「市場」を作れない企業は成長できません。

ところが、先進国では新しい利益を生む余地が極小化しています。文明評論家、J・リフキンは2015年の著書でこれを「限界費用ゼロ社会」と評しました。各産業分野で急速に進むIoT (すべてのモノをインターネットで結ぶ)によって、あらゆるモノとサービスが無料に近づいていることをこう言い切ったのです。先進国でデフレが共通して起きているのは、こういう背景があるとも言っています。

では、AirbnbやUberはどうでしょうか? まずは両サービスの概要を見ていきましょう。

拡大している『Airbnb』と『Uber』

Airbnbは、2008年にアメリカで生まれました。空いた住宅や部屋を貸したい人と、そこに泊まりたい旅行者をネットで結ぶプラットフォームです。世界190カ国でサービスが提供され、ユーザー数は2500万人にもなりました。利用者数では、世界有数のホテルチェーン規模となります。海外では、共有スペースから戸建て住宅、アパート、別荘、島まで様々な物件が登録されています。Airbnbは物件の所有者に「人を泊める喜び」や、必ず収益がもたらされる仕組みを提供したこと、相互評価のシステムを取り入れたことなどにより、急成長しました。

日本には2014年に上陸し、Airbnb日本法人は「発足して1年で年間2219億円の経済波及効果を生んだ。海外ユーザーは93%だった」とコメントしています。

Uberは、スマートフォンのアプリとGPSを使って、移動ニーズとドライバーをマッチングさせるサービスです。2009年に、これもアメリカで生まれました。スマートフォンから2タップで車を呼ぶことができ、支払いはクレジットカードという利便性の高さから、世界58カ国379都市(2016年2月現在)で展開しています。日本でも2014年3月に東京の山手線内南部エリアでサービスが始まりました。

海外では、既存タクシー会社の一部で「法外な料金を請求する」「領収書を発行しない」といった問題がある中、Uberは相互評価を実施しており、車を提供するオーナーに「乗せる喜び」と簡単な小遣い稼ぎを仕組み化した点で成長しました。

両事業の共通点と問題点

「空いた住宅や部屋」や「クルマの空き時間」を事業化し、今まで見過ごされていた市場を見つけ出したという点では、Airbnb、Uberのいずれも「すきま産業」であり、遊休資産の活用(シェア)を収益につなげている点で、まさにシェアリングエコノミー(共有型経済)です。

一方、両者は急成長の半面、既存業界の反発や国ごとに違う法規制の影響を受けています。

Airbnbは、海外でも借り手によってはトラブルが起きていますし、特にサービス初期は宿泊者のマナーに問題があったようです。また「個人間の短期レンタル仲介サイト」でありながらその用途は「宿泊施設」ですから、日本では旅館業法の規制を受けます。貸した人が無許可営業で摘発された例もあります。

Uberでは、既存のタクシー、ハイヤー業界の反発があります。ロンドンでは2016年2月に入ってタクシー業者のデモも起きました。タクシーの「ぼったくり」問題がほとんど無い日本では「個人の車を営業に使うことは違法」という、いわゆる「白タク」規制があります。

このため、日本のUberは、タクシー、ハイヤー会社をパートナー企業にし、車の空き時間を使うことを中核にして事業化していくようです。LINEが2015年1月からタクシー会社と組んで始めた「LINEタクシー」と競合しそうです。

2050年に共有型経済が経済の担い手になる、という論も

規制が厳しい日本ですが、民泊についてはルール整備を図り、シェアリングエコノミーを取り入れる形で整備が進むことになりそうです。インバウンド(訪日外国人)の旅行者が年間1000万人を超え、宿泊施設の不足が見えており、ベンチャー企業側も2015年12月に「シェアリングエコノミー協会」を設立しました。2016年が「シェアリングエコノミー(共有型経済)元年」と言われるのはこのためです。

アメリカでメディア、テクノロジーに詳しく、人気ブログ「BuzzMachine.com」を運営しているジェフ・ジャービスは、2011年発刊の『パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ』(日本語訳:NHK出版)で、「すべてのサービスが公共的なものになる」と予言しました。

また、冒頭のJ・リフキンは近著『限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭』(日本語訳:NHK出版)の中で、「2050年までにシェアリングエコノミー(共有型経済)が、世界の大半で経済生活の最大の担い手となる」と論じました。ただし、リフキンは日本について、「過去との決別を恐れ、確固たる未来像を描けず、岐路に立たされている中途半端な国である」としています。

まとめ

果たして、シェアリングエコノミーは、今後どういう役割を果たしていくのでしょうか。

総務省の平成27年(2015年)版「情報通信白書」は、2030年頃の「まち」「ひと」「しごと」について、「IoT化の進展により、交通システム・物流システムをはじめとした様々な社会システムがICTによる最適制御の対象となっていく」「ビッグデータの活用があらゆる産業に浸透し・・・」と書くとともに、こんな風に展望しています。

「サービス業におけるシェアリングエコノミーの台頭や、製造業における『メイカー・ムーブメント』の登場にみられるような、経済活動における個人の役割の拡大も加速する—」と。

とうとう私たちは、“資本主義の次”の未知の世界に足を踏み出したのかもしれません。 (提供: Houstock Online

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