東京商工リサーチによると、負債総額1000万円以上の全国企業倒産は、2015年には8812件と7年連続で前年を下回り、1990年以来25年ぶりに9000件割れの低水準となった。一方負債総額は、負債100億円以上の大型倒産が前年の7件に対して15件と倍増した結果、前年比12.7%増の2兆1123億8200万円になっている。ここでは2016年に入ってからの倒産も含め、ワースト10の事例を顧みることにしたい(2016年3月上旬現在)。

第10位 インテグレート・メディカル・システム

徳洲会グループに属する同社は、各種医療機器、注射器・カテーテルなどの医療材料、消耗品などの扱いを柱に、1997年12月期には年商約217億円を計上していた。その後事業を徳洲会に移管し、不動産賃貸中心に業容を縮小。徳洲会が関連会社の整理を進める中、2015年3月17日、大阪地裁から特別清算の開始決定を受けた。負債総額は144億円弱。

第9位 名阪ワシントンクラブ

同社は、1997年5月にオープンしたアーノルド・パーマー氏設計のトリッキーなコースレイアウトが売り物のゴルフ場「ワシントンクラブ名阪ゴルフコース」(現・新フォレスタカントリークラブ)の運営を目的に設立されていた。倒産の原因は、長引く景気低迷から来場者数が減少の一途を辿った上、預託金の償還問題が重荷となったもので、2015年8月5日に東京地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は約144億円。クラブハウス所有の名阪フレンドリーパークも連鎖倒産し、この約36億円を合わせると2社合計約180億円となった。

第8位 エンタープライズ自由ケ丘

同社は1992年創業の宅地造成・販売会社。大分市松岡地区で大型団地を手掛けていたが、供給過多に加えて立地面での不利な条件もあって多額の債務超過に陥っていた。2016年1月15日、大分地裁に民事再生法の適用を申請し、同日保全命令を受けている。負債総額は約152億円で、大分県内では史上7番目の規模となった。

第7位 朝日ダイヤゴルフ

同社は、2003年9月に破産したマンション分譲業の朝日住建(株)の関連企業。1991年にオープンした「朝日ゴルフクラブ白浜コース」は観光地である白浜温泉に近く、場内にはリゾートホテルのほかテニスコートや娯楽施設なども設けられ、ピーク時の1998年3月期には売上高約13億円を計上していた。その後ゴルフ場を取り巻く環境が厳しくなる中、売上高も半減、自力再建が困難となった。2015年3月30日に至って、東京地裁に民事再生法の適用を申請。預託金など負債総額は約168億円。

第6位 鷹彦

1987年10月に同社が茨城県にオープンした「鷹彦スリーカントリークラブ」は、プロゴルファーの尾崎将司氏が設計と監修に関わったコースとして注目を集めていた。しかし、東京からの交通の便の悪さに加え、バブル崩壊とゴルフ場の乱立が運営を行き詰まらせた。2015年3月23日、東京地裁より破産開始決定を受けた。負債総額は預託金を中心に、関連会社を含めた3社合計で約185億円。

第5位 蒲郡海洋開発

同社は1988年、蒲郡地区の新しいまちづくりに向けた大型プロジェクト事業として発足した「ラグナックス・アイランド」の事業主体として、愛知県、蒲郡市の自治体、JR東海 <9022>、トヨタ自動車 <7203> などが資本参加する第三セクターとして設立された。2001年には収容力200隻という中部地区最大規模のマリーナ施設が完成。その後、ゲストハウスやホテル、ショッピングモールと並行して分譲マンション事業にも進出、2002年には海のテーマパーク「ラグナシア」をオープンさせた。しかし計画時とは大きく変化した経済環境が集客力を低下させ、2010年3月期からは4期連続での赤字計上。2015年2月18日、名古屋地裁豊橋支部から特別清算開始決定を受けた。負債総額は約200億円。

第4位 スカイマーク

東証1部上場だった同社は、比較的廉価な運賃設定を売り物に一定の需要を獲得、2013年3月期には売上高861億円弱を上げていた。しかし、競合他社との競争激化や急激な円安の進行などから、2014年3月期には最終赤字8億4500万円転落。さらに、エアバス社に大型航空機を発注しながら、資金繰りがつかずにキャンセルしたことで最大7億ドルの違約金を請求され、中間決算に継続企業の前提に関する疑義が注記される事態となっていた。

2015年1月28日には東京地裁に民事再生法の適用を申請、17カ月ぶりの上場企業倒産となった。負債総額は約710億8800万円。9月に発足した新体制では投資ファンドのインテグラルが筆頭株主となり、ANAHD <9202> からも取締役2名を迎えている。

第3位 江守グループホールディングス

1906年に薬種商「江守薬店」として創業した同社は、その後染料や工業薬品や、合成樹脂、電子部品等を取り扱う商社として年々業容を拡大し、2006年には東証1部となっていた。1994年に上海事務所を設置して以降は中国を中心に海外展開を加速させ、2014年3月期には連結売上高2089億円強を計上していた。しかし、中国経済の減速や金融引き締め等の影響から経営に行き詰まり、2015年4月30日に東京地裁に民事再生法の適用を申請、スカイマークに続く上場企業の倒産となった。負債総額は子会社の銀行取引等の保証債務含めて711億円に上る。

第2位 第一中央汽船

同社は国内外の製鉄会社向けに鉄鉱石や石炭をばら積み船で運送するなど、不定期船航路を中心に外航・内航海上運送を手掛ける海運会社として、ピーク時の2008年3月期には単体で売上高1666億円強を上げていた。

しかしリーマン・ショック以降は、海運市況の悪化に伴う船腹過剰に原油価格の高騰が追い打ちをかける中、2014年2月からは商船三井 <9104> の支援の下に船隊規模の適正化や財務体質の強化に努めていた。2015年9月29日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請、同年では3件目になる上場企業の倒産となった。負債総額は約1196億円。100%子会社の568億5900万円を合わせると合計1764億6700万円になる。

第1位 MARU

同社は1989年4月に設立されたAIJ投資顧問が2013年5月に社名変更したもので、日本証券投資顧問業協会のHPによると、2011年3月期末の契約資産は2101億1900万円だった。2012年2月、証券取引等監視委員会の検査により、AIJ投資顧問が顧客から預かっていた年金資産の運用に失敗していたのにもかかわらず、虚偽の報告書を顧客並びに当局に提出していたという事実が明らかとなり、年金運用を運用機関に委託している企業年金はもとより、金融業界全体に衝撃を与えた。

これまでも長引く低金利による運用難や代行返上などにより存続が危ぶまれてきた厚生年金基金については廃止に向けた議論が進み、最終的には廃止の方針が打ち出されることとなる。2015年8月から債権者らから破産を申し立てられていたが、12月16日に至って東京地裁から破産宣告を受けた。負債総額は1313億円に上る。(ZUU online 編集部)