ビットコインなどの仮想通貨を支える技術として注目される「ブロックチェーン」。まったく新たな発想の通貨を生み出した同技術が実は、多くの分野にも浸透してきており、大きな影響を及ぼしつつある。

金融分野以外では例えば、著作権保護、物流管理、さらには不動産、アートなどにも、ブロックチェーンの活用を開始しようとする動きがある。これまで、仮想通貨や決済システムの刷新などの分野で主に活用されると目されてきた「ブロックチェーン」がビジネスにもたらしつつあるインパクトに、今回は焦点を当てる。

ビットコインでも重要視される「ブロックチェーン」

ビットコインとは、法定通貨とは異なる単位を有し、インターネットを通じて電子的に取引され、資金移動や物品の購入時の対価の弁済といった決済手段として利用される「仮想通貨」。日系金融大手の三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> が独自の仮想通貨の開発を進めようとしており「仮想通貨」への注目度も高まっているが、ビットコインを支える基盤技術を提供するのが「ブロックチェーン」だ。

ブロックチェーンは、ピアツーピア(P2P)型の分散ネットワークインフラストラクチャより構成される。プラットフォームの観点からみると、強固な暗号化と電子署名、分散型元帳などが特徴だ。ト電子記録、リアルタイム処理など、ブロックチェーンならではの特徴を生かしたアプリケーションソフトウェアが実装されている。

ブロックチェーンの著作権保護アプリ「Blockai」「Uproov」

イマ、このブロックチェーンを他の分野に応用する動きが活発化しつつある。その1つが著作権保護の分野で、ブロックチェーンの書き換えや改ざんを困難にする特徴を生かした、著作権の証明のための取り組みだといえるだろう。

具体的な例もすでに出てきている。ブロッケイ(Blockai)という米国サンフランシスコのスタートアップがその一つだ。同社はブロックチェーン技術を利用したデジタル著作権保護管理サービスを提供。クリエイターらは同サービスを使うことで、自分の作品をドラッグ&ドロップすれば、ブロックチェーンを利用したデータベースに登録し、証明書をもらえる。

また、レッジャーアッセットは、著作権管理アプリ「アプルーブ(Uproov)」をリリース済みだ。同社はオーストラリアのスマートフォンアプリケーション開発スタートアップで、写真やビデオ、音声について、ブロックチェーンを利用したタイムスタンプをリアルタイムで記録するシステムを構築している。アプルーブでは、デジタルコンテンツに関わる重要な取引などのデータを、第3者の介在なしの記録証明を助ける仕組みを提供しているのだ。

ブロックチェーンが「アート」にも進出へ

すでにデジタルコンテンツ市場は2014年の推計で、7兆8904億円の規模に成長しており、前年比でも103%と成長を示している。デジタルコンテンツの市場拡大が進めば、著作権管理システムを導入するという形につながる可能性ももちろん、ありそうだ。

加えて、ブロックチェーン技術の活用が期待されるのが、アートの分野だ。特に、美術品や高級品のオンライン取引は、「贋作」をつかまされる危険を伴うが、出品された作品が本物だと証明することに応用しようとする動きもある。

具体的には、米国ロサンゼルスのベリサート(Verisart)は、ブロックチェーン技術を応用して、個々の美術品の所有者や所在地、信頼性を確認する分散型データベースを開発し、提供。ほかにも、英国ロンドンのブロックベリファイ(Blockverify)は、高級品販売の追跡や、模造品や盗難品の識別を簡素化するシステムを、ブロックチェーンを利用して作り出した。創作物を保護する役割を果たすのではないかとみられている。

物流をも変革し始めた「ブロックチェーン」

ただし、ブロックチェーンは、取引履歴や著作権の管理だけでなく、ビジネスの基幹的な分野まで変えてしまおうとしているから、さらに驚きだ。同じ仕組みを使って今では、物流・ロジスティクス、あるいはサプライチェーン管理のシステム基盤も刷新してしまおうという取り組みがそれだ。

その発信地はやはり、IT先進国の米国。セントルイスに拠点を置く財務・決済プラットフォーム提供会社のフルエントは2016年3月11日、ブロックチェーンベースの大企業向けグローバルサプライチェーン決済・管理プラットフォーム「フルエント・ネットワーク(Fluent Network)」を発表した。

同プラットフォームでは、調達企業がサプライヤーからの請求書をいったん承認すれば、請求書はトークン化されて、決済情報と紐づけされる仕組みになっている。また、調達企業および金融機関の双方がノードをホストする、連携型のブロックチェーンを採用している点も特徴だ。

さらに、サプライチェーン管理では今後、「スマートコントラクト」機能が注目されるとみられている。同仕組みはmブロックチェーン上で利用される契約交渉などのためのプロトコルで、契約行為をプログラム化し、自動的に実行しようとする取り組みだ。

ビジネスの主要な3つの要素である「ヒト・モノ・カネ」のうちモノを動かす物流も、ブロックチェーンにより、そのシステム基盤が大きく変わってしまいかねないと言えそうだ。(ZUU online 編集部)