今年1月より新しい投資優遇制度の NISA(ニーサ) がスタートしました。NISAは通常であれば20%の税率で引かれる所得税が非課税となるということで、市場からも注目を受けている制度です。NISAの口座開設数も順調に伸びているようで、既にNISAを使った運用を始めている人も多いと思います。 NISAを利用するにあたって注意していただきたいのが、配当金に関する落とし穴です。実は、NISAで投資をしても配当金から所得税が引かれてしまう可能性があるのです。なぜ、NISAなのに課税されてしまうのでしょうか。今回は配当金との関係を中心に、NISAについて見ていきます。

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NISAなのに課税されてしまう人も


はじめに、NISA口座で購入できる商品を確認しておきます。

  • 上場株式
  • ETF(上場投資信託)
  • REIT(不動産投資信託)
  • 株式投資信託

このうち株式投資信託を運用する場合は特に意識する必要はありませんが、上場株式、ETF、REIT(以下、「上場株式等」と表記)を運用する場合には、NISA口座でも配当金、分配金に課税されてしまう可能性があります。たとえば、時間をかけて高配当の株式銘柄を選定してNISA口座で購入したのに、いざ配当金を受け取ってみると20%分が所得税として引かれてしまっていた、というケースが発生しているのです。 NISA口座での運用対象として価格が安定している高配当な株式銘柄を考えている人は多いと思いますが、こういった人は特に注意する必要があります。せっかく高配当銘柄を運用しても、配当から税金が引かれるのではNISAを利用している意味がなくなってしまうからです。


それでは、NISA口座で上場株式等を運用する場合、配当金に課税されないためにはどうしたらいいのでしょうか。 実は、上場株式等については配当金が非課税になるための条件として、その受取方法に「株式数比例配分方式」を選択しておく必要があるのです。次のトピックでは配当金の受取方法の種類とNISAの関係について確認していきます。

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配当金に関するNISAの復習

上場株式等 の配当金の受取方法は、証券会社によっては選択できないものがある場合もありますが、基本的には以下の方法を選択することができます。

  • 株式比例配分方式
  • 登録配当金受領口座方式
  • 個別銘柄指定方式
  • 配当金領収証方式

はじめに「株式比例配分方式」ですが、株式の発行会社から証券会社を経由して証券口座に配当金が入金される方法です。「登録配当金受領口座方式」は、あらかじめ指定したひとつの銀行口座に、株式の発行会社からの銀行振込を受けることによって配当金を受け取る方法です。「個別銘柄指定方式」も銀行振込によって配当金を受け取る方法ですが、保有銘柄ごとに銀行口座を個別に指定することができます。最後に「配当金領収証方式」ですが、株式の発行会社から配当金領収証が送付されるので、ゆうちょ銀行などでそれと引き換えに配当金を受け取る方法です。

これらの受取方法のなかでNISA口座で保有の上場株式等の配当金が非課税となるのは、「株式比例配分方式」だけです。 「株式比例配分方式」以外は、証券会社を経由しない配当金の受取方法となっています。現行システム上、証券会社を経由しないとNISA口座で保有されている株式かどうかを区別をすることができないため、「株式比例配分方式」以外の受取方法では、通常の口座で保有されている株式と同様に配当金に課税する仕組みとされているようです。

課税されないために必要なこと

銀行や証券会社のCMでは「NISA=非課税」ということばかりが強調されてしまいますが、このようにNISAには配当金の受取方法を「株式比例配分方式」にしないと課税されてしまうという落とし穴があったのです。 NISA口座のうち「株式比例配分方式」を選択している人は3割程度しかない、という報道もあります。今までこの点を意識していなかった人については、配当金が課税されてしまわないように、自身のNISA口座の配当金の受取方法を確認することを強くお勧めします。なお、配当金の受取方法の変更は、後述するいくつかの注意点があるものの基本的に簡単で、証券会社にもよりますが申込をすれば数日で完了する場合が多いようです。

ところで、気付くのが遅かったために配当金から既に所得税が引かれてしまったという人はあきらめるしかないのでしょうか。 他口座における株式売買で譲渡損が発生している場合など一定の場合には、確定申告をやり直すことによって引かれてしまった所得税が戻ってくるケースもあります。NISA口座において、通常の場合は他口座と損益通算したり配当控除を受けたりすることができませんが、配当金が課税されてしまった場合についてはこれらの対象とすることができるからです。ただし、還付されるのは特定の場合に限定されるうえに面倒な手続きが増えてしまうので、やはりあらかじめ配当金の受取方法を「株式比例配分方式」としておくのが賢明と言えるでしょう。