宗教,IT,寺院
(写真=PIXTA)

最近、メディアでお坊さんたちを見かけることが増えた。一方で、有名になることなく寺院の経営難に苦しんでいる人も多い。そんな中、冴えた発想を持つお坊さんたちはITの積極的な導入を検討しているという。

「坊主丸儲け」の時代は過ぎ去った?

お坊さんが儲けているというイメージは、高ければ100万円以上になる戒名料と、宗教法人への非課税措置から来ているだろう。しかし、葬儀を除けば、宗教行為による収入のほとんどは彼岸やお盆の檀家回りによるお布施や法事くらいであり、最近ではそのお布施も年々減っているという。

ご存じの方も多いが、宗教法人は宗教活動の範囲内であれば、法人税や消費税、登録免許税などはかからないが、駐車場の経営、檀家総代らとの話し合いで決められる給与には税金がかかるため、お坊さん個人が非課税ということではない。個人の収入は檀家の数次第ではあるが、多くは普通の会社員の給与と変わらない。

儲かっていたのは1980年代後半から90年代初頭のバブルのころまでの話なのだ。必然的に、一般の仕事と兼業する人も現れてきているが、それで生活はなんとかなったとしても、寺院そのものを存続させるにはやはり経営を改善していくしかない。

『月刊住職』でも多角経営のすゝめ

業界誌『月刊住職』(興山舎)を見ると、「最新葬儀アンケートで分かった葬儀費とお布施の急落」「お寺の空き家を民泊として活用する方法」「インターネットをお寺の味方に」などの記事があり、悪化する経済状況とその対処策に苦心している様子が見てとれる。

ただ、ここに「民泊」の話があるように、幼稚園や駐車場の経営にとどまらない多角経営を図る寺院も出てきている。たとえば、寺院の広いスペースを活用した音楽イベントやヨガ教室、婚活イベントなどを行うほか、鍼灸院や整体院などを併設する寺院なども出てきている。これは寺院を単に「死にかかわる場」としてだけでなく、心身の健康やライフイベント全般にかかわる場として展開していく試みといえる。

そのような試みの中で、お坊さんたちがおおいに期待をかけているのが寺院のIT化だ。たとえば、昨年12月、Amazonに「お坊さん便」というサービスが出品され話題となったのは記憶に新しい。これは自宅や墓地で法事(法要)を行う際に、お坊さんを派遣して読経や法話をしてもらえるというもので、仏教界の一部からの反発はあったものの、寺院や檀家を持たないお坊さんからは注目を集めた。

同様のサービスはこれまでも存在していたが、Amazonに出品したという部分に新しさがあった。葬儀の一括見積もりサイトなども存在することを考えると、寺院を持つお坊さんであっても、ネット経由で近隣の法事を受注するというスタイルが今後広まっていくのではないか。

「いいね!」ならぬ「有り難し」ボタン?

東京都港区の愛宕神社では、電子マネーの楽天Edyを使ってお賽銭を“投入”できる。通常の賽銭箱の隣に据えられた専門の賽銭箱で希望金額を入力し、カードリーダーにEdyをかざすと決済音がしてお賽銭を入れたことになるのだ。これは神社の例だが、寺院でも奈良県の安倍文殊院が拝観料や祈祷料などに電子マネーを導入しており、今後も話題性を狙って導入する寺院が現れそうだ。寺院以外の仕事を兼業しているお坊さんにとっても、賽銭回収や警備などの省力化につながるという点が大きなメリットとなる。

「hasunoha」というサイトにも触れておこう。これは登録しているお坊さんたちが人生相談にのってくれるサイトで、閲覧者は気に入った回答にFacebookの「いいね!」に相当する「有り難し」というボタンを押すことができる。

お坊さん側には、身近な存在に感じてもらえるというメリットがある。人気の回答者になれば、そこから自身のサイトに誘導するといった展開もできるので、お坊さんと一般人を結ぶSNS的な場ともなっている。本来、寺院は葬式や法事だけの場ではなく、困りごとがあればお坊さんが相談にのってくれる場であったということを考えれば、この「hasunoha」はITの力を借りつつ原点回帰をしているようにも思える。

現在、「IT×○○」という形で、さまざまな分野へITが進出しているが、こと仏教において、それは宗教を無機質化するものではなく、むしろ個々人のニーズに合わせた“救い”を提供する助けとなりそうだ。それは同時に、お坊さんの経済的苦境への“救い”にもなるだろう。(ZUU online編集部)

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