インディア

12日に投票が締め切られたインド下院の総選挙は、調査会社による出口調査によると、最大野党であるインド人民党(BJP)のナレンドラ・モディ氏率いる政党連合が過半数を獲得する模様です。ただ、調査会社による予測ではインド人民党(BJP)の獲得議席は過半数の272をわずかに超える280議席程度の予想となっています。

インド人民党(BJP)は選挙開始の7日に発表した公約では、「先制核攻撃はしない」「国外からの投資促進」等に加え、国内で唯一イスラム教徒が多数を占めるジャム・カシミール州で認めている特別自治権を撤廃。1992年に暴徒化したヒンズー教徒が破壊したイスラム寺院の場所にヒンズー寺院を建設することを目指すといった宗教色の濃い公約も掲げています。加えて、これら公約の実行にはインド人民党(BJP)が安定過半数を獲得することが必要条件ですが、過去の選挙から考えると出口調査の信頼性が低いこともあり、予断を許しません。

インド総選挙は16日に開票が始まり、大勢は16日中に判明する見込みになっています。 インド総選挙では、野党インド人民党(BJP)による政権奪取が濃厚な情勢です。インド人民党(BJP)が政権を取れば、インド経済は活性化しインド株式指数(SENSEX)は上昇に転じるという見解が多いですが、筆者は一筋縄ではいかないと見ています。

その理由は政権奪取が直ちにインドリスクの解消に繋がらないからです。一般的に、インドリスクとして、複雑な税制、労務管理の難しさ、汚職、物流や電気などのインフラ未整備が上げられます。これらを解決する方向になければ、インドへの外資参入は促進せず、経済成長率は押し上げられないのではないでしょうか。インド人民党(BJP)がこれらの問題に対する解決策を打ち出すには、まず政権基盤を磐石なものにすることが必要であり、時間がかかりそうです。

また、宗教色の濃い公約が、民族間の対立、周辺国、特にパキスタンとの関係悪化を招く方向に進めば、さらなるリスク要因となります。インド人民党(BJP)の支持基盤はヒンドゥー教右派勢力も含まれ、支持基盤と周辺国の間でのバランスを取った政権運営が求められるでしょう。 インド経済の活性化にはモディ政権が早急に政権基盤を固め、具体的な政策を実行すること、宗教色の濃い公約を強力に推進しないことが鍵であると筆者は見ています。

【関連記事】
ついに動き出したインド、政権交代を契機に復活なるか?
インド基本情報(海外進出Online)

Photo by Terra Mileniul