東京五輪,民泊,REIT
(写真=PIXTA)

3月22日に国土交通省から発表された、2016年1月1日現在の公示地価全国平均(全用途)は前年比0.1%上昇し、08年以来8年ぶりにプラスに転じた。緩やかな景気回復の下で円安による海外からのインバウンド客が急増し、大都市の商業地で店舗やホテルの需要が高まった。この結果には、今年2月から実施された日銀によるマイナス金利の影響は反映していないが、現在も続いている金融緩和マネーの流入も地価上昇に拍車をかけた。

その発表のポイントを見ていくと、まず全国の商業地は0.9%上昇。前年は横ばいだったが、8年ぶりのプラスとなった。住宅地は0.2%下落で8年連続の下落となったが、マイナス幅は前年(0.4%)より縮まった。

東京、名古屋、大阪の三大都市圏における商業地の地価は2.9%上昇。外国人観光客の消費で店舗やホテルの収益が改善し、テナントの賃料が上がり地価を押し上げ、不動産投資信託(REIT)の価格上昇に大いに貢献している。また、住宅地は0.5%の上昇にとどまったが、前年の0.4%上昇より、上昇率は上がった。

金融緩和、銀行とREIT

地価上昇の起点となったのは、アベノミクスによる大規模な金融緩和であったことは間違いない。日銀は14年10月に追加緩和に踏み切り、投資マネーが不動産市場に向かった影響が今回の公示地価の上昇に結び付いた。日銀自体も2015年、マーケットからREITを約920億円買い増し、累計で約2900億円を持つに至る。しかしこの緩和マネーの影響で地価が押し上げられているのは三大都市圏などで、地方圏にはその恩恵は届いていないのが現状だ。

また銀行による不動産業向けの新規貸し出しが2015年にバブル期を超え、26年ぶりに過去最高となった。現状は低金利を背景に住宅やオフィスビルの需要が底堅く、マネーが不動産市場に流れ込んでいる。地価の急騰や取引量の急拡大という過熱感は抑制的であるが、マイナス金利政策などの刺激策が長引けば局所的にバブルを生み出す懸念もある。

なかでもメガバンクの融資先は、REITなど不動産ファンド向け融資に向いている。しかし最近のREITは、収益性をじっくり見極めて都市部のオフィスビルや商業施設などに投資しており、値上がり期待だけであらゆる投資家が不動産に資金を回したバブル期とは様相が異なる。このように銀行融資の拡大や日銀による購入でREITの資金調達環境は改善しており、その保有不動産は2016年1月現在で約14兆円と3年で1.5倍になった。

昨年後半には価格の割高感などからマンションなどの需要にやや陰りが出ていたが、日銀が1月にマイナス金利政策を打ち出したことでREIT価格が急上昇するなど不動産市場は再び活性化している。運用難の銀行は不動産向けの融資を再び拡大させざるを得ない状況が続いている。

東京五輪がREITに与える影響

また、2020年の東京五輪開催も確実にREIT価格を押し上げる。2015年3月末のREITによる保有物件のうち、東京23区に所在する物件は、約56%、東京都を含む関東全体では、約75%になる。このように、五輪効果によるREITの保有物件の資産価値の向上や賃料の向上を通じて、REIT市場は活況を呈している。

さらに五輪を控え、東京の都市としての機能を向上させるため、道路や鉄道を中心としたインフラ整備が進められており、REITが保有する物件も恩恵を受けることが予想される。首都圏を環状に囲む3つの高速道路は徐々に建設が進んでおり、物流機能の発展につながると期待されている。

その他、新宿駅南口の超高層ビルとバスターミナルの建設(通称バスタ)、山手線田町~品川間の旧田町電車区跡地の新駅建設(2020年までに暫定開業予定)、日比谷線霞が関~神谷町間の虎ノ門3丁目周辺の新駅開業と周辺の再開発、渋谷駅周辺の大規模再開発など、大きなプロジェクトが目白押しだ。

また五輪は、日本を訪れる外国人の数にも確実に影響を与える。2015年の訪日外国人客数は1900万人を突破し、2000万人に届く勢いだ。政府は今年3月30日、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」で訪日外国人の数を、2020年に現在の約2倍の4000万人、2030年には同3倍の6000万人を目標にする新たな方針を打ち出した。

観光振興の推進は政府の最重要政策の一つに掲げられており、安倍政権の政策目標であるGDP600兆円を目指すエンジンの役割を担わせる計画だ。訪日外国人の増加を背景に、国内の宿泊施設では客室稼働率が完全に上昇傾向にある。このことから、宿泊料金を高めに設定するホテルも増加し、ホテル主体型REITでは分配金の増加等が期待される。

今まで見てきたように、金融緩和と東京五輪開催が、REIT市場に追い風となることは間違いない。また日銀のマイナス金利導入、さらには観光立国日本になるため査証(ビザ)の発給条件を緩和するなど、その追い風はますます強くなっている。このような経済環境が続く限り、REITの高値安定はしばらく継続するものと思われる。

マネーデザイン 代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。

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