株式投資,自動車
(写真=Thinkstock/Getty Images)

株式を購入する際の判断材料として、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などがある。テクニカル分析はチャートなどを駆使して、過去のデータからパターンを把握し、相場の先行きを予測するものだ。一方のファンダメンタルズ分析は、経済活動の状況を示す基礎的な要因を分析するもので、国であれば経済成長率や物価上昇率、失業率、経常収支などから判断する。株式におけるファンダメンタルズ分析は、マクロ的な状態に加え、投資対象と考えている企業の財務状況や業績状況などから、株価の先行きを予測するものである。

個別株の判断材料となる指標のひとつとして、PER(株価収益率)がある。PERは対象企業の株価と収益力を比較することで株式の投資価値を判断するものだ。具体的には、時価総額÷純利益、または株価÷一株当たり利益(EPS)で算出され、1年間に企業が稼ぐ1株当たりの利益が現在の株価の何倍かを見ることでその価値を判断している。なお、東証1部の平均PERは約15倍程度となっており、この平均を上回る高PERの銘柄は割高で、低PERは割安と見るのが一般的となっている。

今回は、自動車セクターが低PERである理由を明確にしつつ、自動車セクターの今後の注目ポイントを考えていきたいと思う。

低PERだから必ずしも買いとはいえない

上述のように、PERが低い銘柄は割安と考えられるが、それはすべてにおいて当てはまる訳ではない。当然ながら、低PERには理由があるのだ。

まず、大前提として「何倍以上なら割高(もしくは以下なら割安)」といった基準がある訳ではない。Webサイトなどでは「PERの割高・割安の一般的な目安は20倍程度だから、PERが10倍のA社の株は買い」といった説明を見かけるが、用途に応じて同業他社や業種毎の平均PERや当該銘柄の過去のPERの推移、市場全体の平均PERなどと比較するのがベターである。利益成長を見込みにくい場合や、収益の先行きに不確実さが多い場合は、PERが上がりにくい側面もあることに留意すべきである。従って、市場全体のPERと比較して低PERであったからといって、短絡的に割安(=買い)と考えてしまうのは危険である。

100年以上の歴史ある「成熟産業」

では、本題である自動車セクターはどうだろうか。そもそも自動車の歴史は、英国のジェームズ・ワットが1767年に蒸気機関を発明したことから始まり、フランスの陸軍技術大尉であるキュニョーが1769年に作成した「蒸気自動車」が世界初の自動車となっている。その後、1902年に日本で最初の自動車が作られ(米国から持ち帰ったガソリンエンジンをベースにボディを乗せたもの)、1904年に純国産の蒸気自動車、1907年に国産ガソリン乗用車が作られた。

このように日本の自動車産業の歴史は100年を超え、巨大産業へと成長し、トヨタ自動車 <7203> はグループ全体での2015年世界新車販売台数で約1015万台と、4年連続で販売世界一となるまでに拡大した。しかしながら、そのトヨタといえども、過去10年で販売台数が大きく伸びているということではなく、800万台から1000万台程度で推移している。日本の自動車産業は巨大で日本経済をけん引していることは確かであるが、同時に成熟産業であり、大きな成長性を有しているとは必ずしも言えないのである。従って、現在急成長しているIT産業などと比較して、中長期の視点で爆発的な利益成長は見込みにくいことから、PERが低い状態で推移している。

自動車セクターは「景気敏感株」とも呼ばれており、世界経済や外国為替市場の動向次第で株価が左右されやすい側面もある。景況感が明るくなれば、評価が上がる傾向にあるが、現在の中国をはじめとした新興国景気の減速懸念や、リスク回避的な動きからくる円高進行を考えれば、低PERであることは容易に理解できるだろう。

技術革新が将来の価値を生む

先ほど述べたように、自動車セクターは円高が進んでいることから、2017年3月期の業績については厳しいものとなる。新興国を中心とした減速懸念を考え合わせれば、世界的な自動車需要の低下も懸念されるはずだ。これらを踏まえたうえでの注目ポイントは、①外国為替市場の動向、②自動車需要の動向、③2017年3月期の業績見通しを注視すべきであろう。特に③については、大手電機のパナソニックが業績予想を引き下げ、暴落しているだけに、自動車セクターでも同じような展開となるリスクを考慮しておきたい。

ただし、上記は向こう1〜2年の短期的な話である。5年以上の中長期で見ると様相が変わってくる。というのも、本質的なPERの上昇は、技術革新がキーポイントとなるからだ。

自動車セクターでは、自動運転技術の向上や、水素を活用したクリーンな自動車など、様々な発展の可能性を秘めている。たとえば、完全な自動運転かつ、クリーンエネルギー使用の自動車がガソリン車並みの低コストで購入できるとなれば、世界中の自動車ユーザーが買い替えに動く可能性があるのではないだろうか。そうなれば、爆発的な売り上げを見込むことができ、PERも上昇することだろう。その意味では、日本の自動車セクターが、グローバル市場で次世代車の開発競争を勝ち抜き、主導権を握れるかがカギとなる。(ポートフォリオマネージャー 澁澤龍)

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