医療資源の比較
1|日本は、医師数は少なく、看護師数は他国並みで、薬剤師数は多い
続いて、医師数を比較してみる。プライマリ・ケアの制度があるものの、その運用が緩やかなドイツやスウェーデン等では、医師数が多い。一方、日本は、主要国の中では医師数が少ない。
次に、看護師数を見てみよう。スイスやデンマークが多い。これは、医療の一部を看護師に担わせるべく、その養成に取り組んだ結果と見られる。日本は、主要国の中位に位置している。
一方、薬剤師数は、日本が多い。スイスやデンマークでは少なく、看護師数とは対照的となっている。日本では、薬剤師の調剤が、医療において重要な役割を果たしている様子がうかがえる。
2|日本は、病院数や病床数が、他国よりも充実
続いて、病院数を見てみよう。ここでは、日本が他国を圧倒している。ドイツやフランスは、地方の医療の充実を進めた結果、比較的、病院数が多い。一方、アメリカやカナダは、少ない。
次に、病床数を見てみる。日本は、突出して多い。多くの国で、病床数を削減して、医療費の抑制を図っている。日本は、医療施設の整備を進めて、医療を充実させてきたと言える。
3|日本のCTやMRIなどの設備の充実ぶりは、他国を圧倒
続いて、高度医療機器であるCTの配備数を見てみよう。日本は、他国を圧倒している。各国とも配備の充実により、医療の質を向上させる途上にある。
最後に、MRIの配備数を見てみよう。ここでも、日本の配備は、他国より進んでいる。イタリアやデンマークでは、配備数が大きく伸びている。アメリカは、日本についで、配備数が多い。
おわりに(私見)
以上の統計指標の比較から、得られた内容をもとに、日本の医療について、次のように、まとめることができる。
・これまで日本は、低い医療費で、質の高い医療に、容易にアクセス可能な制度を確立してきた。
・その制度は、医師数を増やす代わりに、医療施設や設備を充実させることで構築してきた。
・しかし、現在、コスト面で、日本の優位性は徐々に薄れつつある。
・今後、世界一高齢化が進む日本では、医療の更なる効率化を図ることが不可欠、と考えられる。
なお、本来、医療の国際比較は、統計とともに、これまでの制度の歴史や、今後の制度変更の見通し等を、あわせよむ必要がある。引き続き、国際比較を行い、医療制度のあり方について、議論を重ねることが必要と考えられる。
*なお、イギリスは、看護師の定義変更の影響で減少しているが、実際には、漸増している模様。
篠原也(しのはらたくや)
ニッセイ基礎研究所 保険研究部
主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任
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