爆買いする中国人観光客をターゲットに順調に売り上げを伸ばしてきたラオックス <8202> が苦戦している。中国人観光客が家電ではなく、消耗品やテーマパークの体験などにお金を使うように変化したからだ。新たに始めるアウトレットなど事業の集約と強化で、盛り返すことはできるのか。

客単価落ち込み、売上に打撃

中国人旅行客の変化は、これまで爆買いで大きな利益を上げてきた小売店には大打撃だ。ラオックスの月次状況報告によると、2016年2月の売上高は、前年同月比11%減と大幅に後退した。この1年間、店舗数は18店舗から36店舗と倍増したにも関わらず、売り上げが大きく減少する事態に陥った。その要因の一つは1人あたりの平均購入単価で、昨年の約3万8000円から約3万円におよそ8000円落ち込んでいるのである。

同社の苦境は日本国内のみならず、親会社の中国の蘇寧雲商集団と連携し展開してきた中国国内での店舗事業にも及ぶ。2011年に南京市内で1号店をオープンさせてから、一時は14店舗まで販売網を拡大したが、インターネット通販の拡大などに押された。ここ数年は売り上げが落ち込み、2015年度12月期の中国店舗の売上高は前期比38%減の約69億円、営業損益は約4億円の赤字となっていた。これを受け、同市内に残る3店舗を閉鎖して、2015年度末で事業から完全撤退するなどの事業の見直しをしたが、同社の株価は低迷している。直近の最高値だった2015年6月の555円から右肩下がりで下落し、このところ100円台の前半での値動きとなっている。

アウトレットが救世主となるのか

逆風の中で、同社が次の一手として取り組むのがアウトレット事業だ。2016年後半に、複合施設の千葉ポートスクエアの商業棟をリニューアルして開業する。今までアウトレットに出店はしていたものの、主体にまわるのは初めてだ。千葉ポートスクエアはJR京葉線千葉みなと駅から徒歩10分、成田空港からは40キロほどの距離にあるがアクセスは微妙だ。近年は利用者数も減り、海外投資家の間で転売が繰り返されていた。ここを中国不動産大手の緑地集団と共同で取得し、資本金の35%をラオックスが出資する形で運営する合弁会社を設立している。このアウトレットでは、化粧品や衣料品、家電製品など、中国人観光客が欲しがるものは何でもそろうほか、エンターテイメント施設も誘致する計画。まさに囲い込もうと言う作戦だ。

ラオックスの将来を占うアウトレット事業だが、千葉県内のアウトレットはすでに飽和状態にある。例えば、成田空港から直行バスで約15分の酒々井プレミアム・アウトレット、また数駅隣の海浜幕張駅前には三井アウトレットパーク幕張もある。これ以外にも木更津にもアウトレットがあり、アクセスでかなり劣後する同社は苦戦を強いられるだろう。

ラオックスはアウトレットを含めた来店型事業以外に、越境EC事業をさらに強化する方針も打ち出している。中国人の消費需要を取り込む戦略だが、果たして彼らの興味を引くことができるのだろうか。 (ZUU online編集部)

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