自動車,AT
(写真=PIXTA)

あなたの自動車運転免許は、AT限定だろうか。MT車も運転できるものだろうか。

ATとはオートマチックトランスミッション、MTはマニュアルトランスミッションの略。運転免許統計によれば、2015年現在、免許保有者1029万7590人のうち536万3578人(52.1%)がAT限定。この割合は少しずつ高まってきており、今後も高まるだろう。

1991年に始まったAT限定免許制度以前の免許取得者には考える余地はなかったが、多くのクルマがATの現在、マニュアル車を運転する機会はあまりないかもしれない。取得費用も安く手間もかからないAT限定免許を選ぶ人が増えるのも納得できる。

欧州では価格帯が低いほどMT車が多い

AT免許が増えていることから分かるように、日本ではAT車のほうが売れているが、欧州ではMT車が存在感を持っている。

欧州の調査会社が出した2015-16年のデータによれば、ラグジュアリー部門ではほぼ100%がAT車なものの、中上級クラスのAT車の割合は80%、スポーツタイプでは65%、中級で40%となっており、SUV/オフロードで30%、小型車に至っては10%程度しかない。

日本では、価格帯の低い小型車もATを選ぶ傾向が強いが、欧州ではMT優先のようだ。

この違いはなぜ起こるのだろうか。まずATは変速を自動でしてくれ、MTは手動でしなくてはならないことの違い。MTでは1速~5速(6速)とシフトレバーおよび左足でのクラッチ操作で、動力を伝えていかねばならないのに対して、ATでは自動で行ってくれるので、運転手はアクセルとブレーキ操作が主となる。

日本では教習所での料金が高額であり、免許を取得までには時間もお金もかなり負担が大きい。合格点に達しないと卒業はできないので、落ちたら落ちた分だけコストも増えていく。それなら余分なクラッチ操作がないATで早く卒業できるほうを選ぶのは、まったくもって理にかなっていると思う。昔は「男性でAT限定はバカにされる」ということもあったようだが、最近はそうした意識も薄れている。

だが欧州で支持されているように、MTにも利点はたくさんある。MT免許があれば、ATも運転できる。特に商用車に顕著だが、会社が持っているクルマがMTという場合は、仕事上必要になることもある。最近はそうでないものもあるが、MT車は基本的にAT車より安い。

また両手両足を使いながらの操作なので、コントロールしている感覚が強いので、運転の楽しさを味わうことができる。ここは面倒だと感じる日本人と欧州の人との違いだろう。

ATは、発進、加速の際に1テンポ弱遅れ気味なので、クルマのシフトチェンジに人間が合わせるようになる。MTなら自分で調整ができ、タイムラグは感じにくい。欧州では、自分で好きなように加速を楽しみたいという人が多いのではないかと思う。回転数の調整など運転の仕方によっては、駆動ロスがないので燃費を良くすることもできるし、スムーズにシフトチェンジできるようになるのはやはり楽しい。もっとも燃費に関しては、最近のCVTの方が優れているという意見もあるのだが……。

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マニュアル運転はボケ防止にもなる?

安全性についても差がある。MTなら停止する際、シフトダウンによるエンジンブレーキが効かせられるし、いつもシフトチェンジを行っている習慣で、そんなに違和感はないだろう。ATではDレンジに入れたままだとエンジンブレーキが効かないので、D以下のレンジに入れて効かせることになる。しかしDに入れっぱなしの人が大半だろう。そうなると、停まる際にはかなり先を予測しながらフットブレーキを踏むことになり、都市部で信号や渋滞が多い場合は、加速もしにくい。

もう一つがATでの踏み間違いだ。焦っていたり、同じ動作を繰り返していたりすることによって、ブレーキとアクセルを踏み間違えた事故が後を絶たない。MTの場合、クラッチで駆動を断つことができるので、踏み間違いの事故はほとんど起こりえないといえる。還暦を迎えた某元レーシングドライバーは「ボケ防止のためにもMTの運転をすすめる」という。両手両足を使った運動と、踏み間違いが起きにくい仕組みとして、MTの有効性を訴えた。

MT車復活の兆しもなくはないが……

冒頭に述べたように、日本では今後もAT比率は上がるものと思えるが、MT車復活の兆しもなくはない。

以前も紹介したが、MT車専門の「おもしろレンタカー」や、MTほか旧車のレンタルも行っている「fan2drive」など1日だけMTを運転したいというニーズはあるようだ。

昨年12月に発表されたスズキ アルトワークスのキャッチコピーは「いま、マニュアルに乗る。」であり、軽い車重とあいまって、シフトの操作感は気持ち良い。時代に逆行するようなコピーと驚かれたが、以前からのアルトワークスファンも一定数いるうえ、MTファンの心をとらえることに成功し、なんと90%がMTを選ぶという。

日本でMT人気も少し盛り上がりつつあるので、輸入車のMT導入比率も上がると良いのだが、ただでさえ販売台数はそう多くないので難しい希望だろう。(有賀香織、オート・クリティーク・ジャパン代表取締役)

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